美容室の棚卸しを手書きの表からスプレッドシートへ移す手順|在庫金額は発注の商品マスタの単価で自動計算し、繰越と出入庫が合わない品目は備考に残す
美容室の棚卸しを手書きの表からスプレッドシートへ移す手順|在庫金額は発注の商品マスタの単価で自動計算し、繰越と出入庫が合わない品目は備考に残す
美容室やサロンで、紙の在庫管理表に手書きで数を付けて棚卸しをしている場合、数を数えるところまでは紙でも困りませんが、「今の在庫はいくら分あるのか」を出す段階で手が止まります。品目ごとに単価を調べ、電卓で掛け算をして、合計を出す。この作業が月末の負担になります。
手書きの表をスプレッドシートへ移すときの要点は次のとおりです。
- 品目名・区分に加えて、「先月繰越」「在庫数(管理表)」「実地棚卸数」「単価」「在庫金額」「備考」の6本で始める。 紙の表と1対1で写せる列にしておくと、転記の確認がしやすい
- 単価は棚卸し用に新しく調べず、発注で使っている商品マスタの単価を使う。 最初の1回は単価の値を貼り付けて始めてよいが、毎月続けるなら品番でマスタから引く数式に替える。単価の置き場所が1か所なら、値上げがあっても棚卸し側を直す必要がない
- 在庫金額は「実地棚卸数×単価」の数式にする。 単価の欄が空の品目は金額も空になるので、どこが未登録かが一目で分かる
- 単価が無い品目は、発注先の商品リストや過去の請求書から拾う。 消耗品など金額に入れない品目は、入れないと決めて記録しておく
- 税込で積むか税抜で積むかを最初に決め、商品マスタがどちらで持っているかを確かめる。 会社の経理方式に合わせるのが基本で、迷ったら顧問税理士に確認する
- 「繰越+入庫−出庫」と在庫数が合わない品目は、数字を直さずに備考へ残す。 合わない理由は数え間違いとは限らず、出入庫の書き漏れのこともある
以下、名古屋のWEB制作会社graciautoが、白髪染め専門店フランチャイズ(20店舗以上・2026年10月時点)の1店舗で、2026年9月の棚卸しをスプレッドシートにまとめたときの手順と判断を紹介します。
もとになった紙の表
この店で使われていたのは、次の2種類の紙でした。
| 紙 | 枚数 | 書かれていた内容 |
|---|---|---|
| 在庫管理表 | 3枚 | 品目ごとの先月繰越、日々の出入庫の記入、月末の在庫数 |
| 棚卸表 | 1枚 | 月末に実際に数えた数量 |
品目は合計44。シャンプーやトリートメントの店販品、カラー剤や2剤(オキシ)などの業務用品、ドライヤーなどの美容機器が混在しています。紙のままでは、品目ごとの単価がどこにも書かれていないため、在庫金額を出すには44品目すべての単価を別に調べる必要がありました。
一方で、この本部にはすでに各店がスマホから使う発注フォームがあり、その裏側に品番・商品名・税込単価を持つ「商品マスタ」がありました。発注で実際に使っている単価なので、棚卸し用に調べ直すより新しく、信用できる情報です。棚卸しの単価をここから取れば、調べ直しの手間がほぼなくなります。
手順1:紙の表と1対1で写せる列を作る
最初に作る列は、紙の表にある情報をそのまま受け止められるものに絞ります。
| 列 | 中身 | 入れ方 |
|---|---|---|
| 品目名 | 紙に書かれた商品名 | 転記 |
| 区分 | 店販/業務用/美容機器 | 転記時に付ける |
| 先月繰越 | 在庫管理表の繰越数 | 転記 |
| 在庫数(管理表) | 在庫管理表の月末の数 | 転記 |
| 実地棚卸数 | 棚卸表の数 | 転記 |
| 単価(税込) | 商品マスタの単価 | マスタから |
| 在庫金額 | 実地棚卸数×単価 | 数式 |
| 備考 | 合わない点・単価の出どころ | 気づいた点を書く |
ポイントは、「在庫数(管理表)」と「実地棚卸数」を別の列にしておくことです。紙の管理表に書かれた帳簿上の数と、実際に棚で数えた数は、本来一致するはずのものですが、別々に持っておかないと照合ができません。今回は44品目すべてで両者が一致していたので、実地の数をそのまま金額計算に使えました。一致しない品目があった場合は、実地棚卸数を正として、差を備考に書きます。
区分の列も最初から付けておくと便利です。合計を店販・業務用・美容機器に分けて出せるので、「店頭で売るための在庫」と「施術で使う材料」がそれぞれいくらあるかが分かります。店販在庫が多すぎるのか、材料の持ちすぎなのかで、次の発注の考え方が変わるからです。
手順2:単価は発注の商品マスタから取る
単価を棚卸し用に一から調べて入力すると、同じ商品の単価が「発注の商品マスタ」と「棚卸しの表」の2か所に存在することになります。値上げがあったときに片方だけ直して、もう片方が古いまま残る、というずれがいずれ起きます。単価の置き場所はマスタ1本にして、棚卸し側はそこから引く作りにするのが正しい形です。単価を2か所で持つと何が起きるかは、発注フォームの単価をマスタと画面の2か所で持たないで詳しく書きました。
今回は、商品マスタにある税込単価を単価列に入れ、在庫金額は数式で出す形にしました。毎月の棚卸しで使い続けるなら、品番を列に足して、品番をキーに商品マスタから単価を検索する数式(VLOOKUPやXLOOKUP)にしておくと、マスタ側の値上げが自動で反映されます。別のファイルにあるマスタを参照するなら、IMPORTRANGEで取り込む方法もあります。複数ファイルからの取り込み方は複数のスプレッドシートをIMPORTRANGEで1枚に集めるなら月ごとの範囲で1本にするにまとめています。
ここで注意したいのは、紙の表の商品名とマスタの商品名が、そのままでは一致しないことです。手書きの表は略称で書かれていることが多く、容量の表記も現場の呼び方になっています。今回も、紙では「100g」と書かれていたトリートメントは、確認したところ150gの商品の書き間違いでした。名前の文字列で機械的に突き合わせるのではなく、1品目ずつ「マスタのどの品番に当たるか」を決めてから単価を入れるのが確実です。品番の列を作っておけば、次の月からはこの対応付けを繰り返さずに済みます。
手順3:単価が無い品目を埋める
発注の商品マスタは「発注フォームから注文できる商品」の一覧なので、店にある在庫のすべてが載っているわけではありません。今回は44品目のうち13品目について、マスタに単価がありませんでした。内訳は次のような品目です。
- 商品マスタに載っていないシャンプー・トリートメント
- 現在は発注フォームで扱っていないカラー剤用の2剤
- ドライヤーなどの美容機器
- グローブや保護用のクリームなどの消耗品
単価列が空のままでも、在庫金額の数式は空欄を返すだけで、ほかの品目の計算には影響しません。単価を入れた瞬間にその行の金額が出て合計に加わるので、「どの品目がまだ未確定か」が表を見ればすぐ分かります。
単価の出どころは、手間の少ない順に次のとおりです。
| 探す場所 | 向いている品目 |
|---|---|
| 発注先が出している商品リスト・価格表 | 現在も取り扱いのある商品 |
| 過去の請求書(PDF) | 今は発注フォームで扱っていない商品 |
| オーナー・店長への確認 | 単発で仕入れた機器、まとめ買いした品目 |
今回は、シャンプー・トリートメントは発注シートに登録していた商品リストから、2剤と美容機器は過去の請求書のPDFから単価を拾いました。商品リストは税込、請求書は税抜で書かれていたため、両方に載っている品目で「請求書の税抜額×1.1が商品リストの税込額と一致するか」を確かめ、同じ単価だと確認してから使っています。出どころが2つある品目は、このように突き合わせておくと安心です。
ただし、請求書の単価はその請求書を出した当時のものです。今回使った請求書も1年以上前のもので、その間に値上げがあった可能性は残ります。請求書から拾った単価には、備考に「○年○月の請求書より」と出どころと日付を書いておくと、あとで見直すときに迷いません。また、マスタに無い品目の単価を棚卸しの表へ直接入れると、単価が2か所に分かれます。毎月使う品目なら、商品マスタの側に行を足してから棚卸し側で引くのが本来の形です(今回は初回のため、棚卸しの表に直接入れて合計を先に出しました)。
もう一つ大事なのが、金額に入れない品目を決めることです。グローブや保護用のクリームのような消耗品は、今回は計算に入れないと決めました。入れない品目は、行ごと消すより、行を残して備考に「計算対象外」と書いておくのがおすすめです。消してしまうと、翌月に「あの品目はなぜ無いのか」が分からなくなるからです。
単価がどうしても分からない品目が残った場合は、その品目を除いた合計を「単価登録分の合計」として先に出し、未確定の品目名を添えて報告します。全部そろうまで報告を止めるより、何が残っているかを見せたほうが確認が早く進みます。今回も、最初は「単価登録分の合計」と未登録13品目の一覧を出し、確認の回答を受けて単価を埋めました。最終的に、単価が未確定の品目は美容機器1台、税込か税抜かの確認が残る品目が1つ、という状態まで絞り込んでいます。税込・税抜が分からない値を入れた品目は、備考にその旨を書き、確認がとれるまで合計に注記を添えておくのがおすすめです。
手順4:税込で積むか税抜で積むかを決める
在庫金額を税込で出すか税抜で出すかは、最初に決めておく必要があります。途中で混ざると、合計がどちらの数字なのか分からなくなります。
確かめることは2つです。
- 商品マスタの単価が税込か税抜か。 発注フォームの商品マスタは、店が支払う金額を見せるために税込で持っていることが多い。今回のマスタも税込でした
- 在庫金額を何に使うか。 店の状況把握や本部への報告なら、発注で見慣れている税込のほうが感覚に合う。決算の棚卸資産として使うなら、会社の経理方式(税込経理か税抜経理か)に合わせる
税抜で必要になった場合は、税込単価から計算できます。今回の発注フォームでは、送料の判定に使う税抜額を「税込単価÷1.1を四捨五入」で出しています。棚卸しでも同じ計算式を使えば、発注と棚卸しで税抜の考え方がそろいます。ただし決算に使う数字は、端数処理を含めて顧問税理士に確認してから確定させてください。
手順5:繰越と出入庫が合わない品目を備考に残す
在庫管理表には、先月繰越と、月中の出入庫の記入があります。本来は「先月繰越+入庫−出庫=月末の在庫数」になるはずです。今回の44品目では、管理表の在庫数と棚卸表の実地の数は全品目で一致していましたが、繰越から在庫数への動きが、出入庫の記入と合わない品目がいくつかありました。トリートメント、ヘアクリーム、シャンプー、2剤などです。
このとき、出入庫の欄を「合うように」書き直してはいけません。合わない原因として考えられるのは、たとえば次のようなものです。
- 入庫したのに、管理表へ記入していない
- 店販で売れた分や施術で使った分の出庫を書いていない
- 他店との貸し借りや、本部からの直接の補充がある
- 繰越の数が先月の実地の数ではなく、帳簿の数から写されている
どれが原因かは、表の数字だけでは判断できません。数字を直してしまうと、原因を調べる手がかりが消えます。スプレッドシートでは、実地の数を正として金額を出しつつ、合わない品目の備考に「繰越○→在庫○、出入庫の記入と差あり」と事実だけを書いて残します。
この確認を毎月続けるなら、「繰越+入庫−出庫」を計算する列を足し、在庫数(管理表)と差がある行に色が付くよう条件付き書式を設定しておくと、目で探す必要がなくなります。合わない品目が毎月同じなら、その品目の入出庫の記入ルールを見直すきっかけになります。
判断基準:どこまでスプレッドシートに任せるか
手書きからスプレッドシートへ移すと、何でも自動化したくなりますが、最初の1回は次の線引きで十分です。
| スプレッドシートに任せる | 人が決める |
|---|---|
| 在庫金額の計算(数量×単価) | 紙の品目名とマスタの品番の対応付け |
| 区分ごとの合計 | 単価が無い品目の出どころ |
| 単価未登録・差のある行の目印 | 金額に入れない品目 |
| マスタからの単価の取り込み | 税込・税抜のどちらで報告するか |
計算と目印は数式に任せ、意味の判断は人が持つ、という分け方です。AIや自動化を在庫管理に使うときも同じで、AIに在庫管理を任せるときの設計|計算はシステムに、判断だけをAIに分けるで書いた考え方がそのまま当てはまります。
複数店舗の在庫をまとめて見る段階に進むときは、店ごとに同じ列構成のシートを作り、区分の名前もそろえておくことが前提になります。店舗によって区分の付け方が違うと、合算したときに意味の違う在庫が混ざります。在庫データを合算するときの注意点は在庫データを倉庫別に合算してはいけないを参考にしてください。
まとめ
手書きの棚卸しをスプレッドシートへ移すときは、紙の表と1対1で写せる列から始め、単価は発注で使っている商品マスタから取るのが近道です。
- 列は品目名・区分に加えて「先月繰越」「在庫数(管理表)」「実地棚卸数」「単価」「在庫金額」「備考」。帳簿の数と実地の数は別の列に持つ
- 単価は商品マスタの1か所だけに置き、棚卸し側はそこから引く。紙の品目名とマスタの品番は1品目ずつ対応付ける
- 単価の無い品目は、商品リスト・過去の請求書・オーナー確認の順で埋め、出どころと日付を備考に残す。金額に入れない品目は行を残して備考に書く
- 税込・税抜は最初に決める。決算に使うなら経理方式に合わせ、顧問税理士に確認する
- 繰越と出入庫が合わない品目は、数字を直さず備考に事実を残す
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