店舗のMeta広告は配信地域を最初に確かめる|「日本」のまま出すと予算の大半が来店できない地域に流れる構造と、半径・性別・年齢の絞り方
店舗のMeta広告は配信地域を最初に確かめる|「日本」のまま出すと予算の大半が来店できない地域に流れる構造と、半径・性別・年齢の絞り方
InstagramやFacebookに広告を出していて、クリックはそれなりに付いている。クリック単価も10円台で安い。それなのに、予約が増えた実感がない。店舗のMeta広告でこの状態になっているとき、クリエイティブや広告文を直す前に見る場所があります。
結論から書きます。来店型の店舗がMeta広告で最初に確かめるのは、広告セットの「地域」です。 ここが「日本」のままだと、広告は全国に配信されます。確認と修正の順番は次のとおりです。
- 広告セットの地域が、店舗を中心とした半径になっているかを見る
- 広告マネージャの内訳(地域別)で、実際にどの都道府県にお金が使われたかを見る
- 性別・年齢の内訳を見て、来店客の層と合っているかを見る
- 直すときは「クリック単価が上がるのが正常」と理解したうえで、半径・性別・年齢を絞る
graciautoでは、名古屋の美容サロンFCをはじめ店舗の広告アカウントを点検する機会があります。以下は、そのなかで実際に数字を取った例と、そこから整理した確認手順です。
実例:地域が「日本」のままだった店舗広告の内訳
愛知県内のある美容サロンの店舗で、予約ページへ誘導するMeta広告が約8か月動いていました。日予算は500円弱、月に約1.4万円。少額なので誰も細かく見ておらず、「クリックは取れている」という認識でした。
広告セットの地域設定を開くと、指定は国単位の「日本」だけでした。広告マネージャから地域別・年齢性別・配信面の内訳を取り出した結果が次の表です。
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| 配信期間 | 約8か月 |
| 累計の消化額 | 約11.2万円(月平均 約1.4万円) |
| リンクのクリック | 8,283回(平均クリック単価 約13.5円) |
| 地元の県(愛知)への消化 | 13.7% |
| 東海3県まで広げた場合 | 17.5% |
| 配信された地域の数 | 52地域(東京・大阪・北海道など) |
| 男性への消化 | 37% |
| 40代以上の女性への消化 | 46% |
| 配信面 | Instagramが98% |
この店舗はヘアカラーを中心にした美容サロンで、来店客の大半は40代以上の女性、商圏は車で15分ほどの範囲です。ところが、お金の8割以上は県外に、4割近くは男性に使われていました。
県内の13.7%も、そのまま商圏ではありません。愛知県は広く、県の反対側から通う人はまずいません。人口比でさらに商圏へ絞り込むと、来店の可能性があるクリックは月に5〜7回程度という試算になりました(あくまで人口比の試算です)。月に約1,000回あるクリックのうち、1%前後です。
なぜ気づきにくいのか:クリック単価が安いほど成績が良く見える
全国配信の広告は、管理画面の上では「成績の良い広告」に見えます。ここが厄介な点です。
Metaの配信システムは、設定された目的(この例ではリンクのクリック)をいちばん安く達成できる相手を探します。対象が日本全国なら、候補は数千万人います。そのなかからクリックしやすい人を選べるので、クリック単価は下がります。実際、この広告のクリック単価は3月の18.6円から8月には10.7円まで下がっていました。数字だけ見れば、順調に最適化が進んでいるように読めます。
しかし、来店型の店舗にとって、北海道の人の1クリックは来店につながりません。ローカル店舗の広告で「クリック単価が妙に安い」は、良い知らせではなく、配信地域が広すぎるサインとして読むのが安全です。
もう1つ、気づきにくくなる条件があります。広告のリンク先が外部の予約システムの場合です。予約システムのページには、多くの場合Metaの計測タグを置けません。すると広告マネージャ上で「予約」という成果が数えられず、評価の物差しがクリック数とクリック単価だけになります。物差しがクリックしか無い状態で全国配信になっていると、悪い数字がどこにも出てきません。
確認手順:広告マネージャで見る3か所
確認は5分ほどで終わります。広告マネージャ(PCのブラウザ版)で行います。Metaの管理画面は表示や名称がよく変わるため、以下は執筆時点の構成です。項目名が違っていても、探すものは同じです。
1. 広告セットの「地域」
キャンペーン → 広告セット → 編集と進み、オーディエンスの欄にある「地域」を見ます。
- 「日本」とだけ書かれている → 全国配信です
- 「愛知県」など都道府県だけ → 県全域に配信されています。来店型の店舗には広すぎることがほとんどです
- 住所やピンを中心にした「半径◯km」 → 意図して絞られた状態です
キャンペーンが複数あるときは、「配信中」になっているものから見ます。終了済みのものは後回しで構いません。
2. 内訳の「地域」
設定だけでなく、実績も見ます。広告マネージャの表の右上にある「内訳」から、配信の「地域」を選ぶと、都道府県ごとの消化額とクリック数が並びます。期間は「全期間」に広げます。
ここで地元の県が上位に来ていなければ、設定を見るまでもなく地域が広すぎます。先の例では、この画面だけで「愛知は13.7%」が分かりました。
3. 内訳の「年齢・性別」と「配信面」
同じ「内訳」から年齢と性別を選びます。店舗の客層と見比べて、明らかに来店しない層へ大きく流れていないかを確認します。配信面(プラットフォーム)の内訳も見ておくと、InstagramとFacebookのどちらで使われているかが分かり、クリエイティブを作る際の前提になります。
絞り方:半径・性別・年齢の決め方
半径は「実際に通っている距離」から決める
地域は、店舗の住所にピンを立てて半径で指定します。半径は感覚ではなく、既存客の住所や来店手段から決めます。
- 徒歩・自転車が中心の都市部の店舗:半径2〜5km
- 車での来店が中心の郊外の店舗:半径10〜15km
先の例の店舗は郊外型で、再開する場合の設定は半径10〜15kmとしました。以前の記事「サロンのInstagram広告の出し方」では半径5kmを目安に挙げましたが、これは都市部の店舗を想定した値です。迷ったら狭いほうから始めて、配信量が足りなければ広げます。逆の順番だと、広い設定のまま放置されがちです。
地域の対象は「この地域に住んでいる人、または最近この地域にいた人」という扱いになります。観光地や大きな駅の近くでは、通りがかりの人にも配信されます。店舗のある場所がそうした立地なら、半径をさらに狭めるか、ピンを住宅地側へずらす方法があります。
性別・年齢は「指定したつもり」に注意する
客層がはっきりしている業態なら、性別と年齢も指定します。先の例では「女性・40歳以上」です。
注意点が1つあります。現在のMeta広告には、AIが配信対象を広げる「Advantage+ オーディエンス」という設定があります。これが有効な状態では、入力した年齢や性別は「厳密な条件」ではなく「参考情報」として扱われ、指定の外にも配信されることがあります(地域と最低年齢は条件として守られます)。年齢・性別を厳密に守らせたい場合は、オーディエンスの欄から従来型の設定(元のオーディエンスオプション)に切り替えます。
どちらが良いかは業態次第です。ただ、男性がほぼ来店しない業態で男性に4割近く配信されていたなら、厳密な指定に切り替える理由は十分にあります。設定を変えた後は、1〜2週間後にもう一度「内訳」を開き、指定どおりに配信されているかを実績で確かめます。
簡易な作成画面から出した広告ほど見直す
Meta広告は、広告マネージャを使わなくても、Instagramアプリの「投稿を宣伝」などの簡易な画面から出稿できます。手軽な反面、設定項目が少なく、地域を意識しないまま配信が始まることがあります。どの経路で作った広告でも、配信が始まれば広告マネージャに表示されます。一度、PCで開いて確認することをおすすめします。
直したあとに起きること:クリック単価は上がるのが正常
地域を半径10kmに絞ると、配信対象は数千万人から数万人に減ります。安くクリックしてくれる人を全国から探せなくなるので、クリック単価は上がります。10円台だったものが50円、100円になっても不思議ではありません。
ここで「成績が悪くなった」と判断して元に戻すと、振り出しに戻ります。比べるべきはクリック単価ではなく、来店の可能性がある人への到達にいくら払ったかです。先の例を計算し直すと、月1.4万円で商圏内のクリックが5〜7回なので、商圏内の1クリックに2,000円以上を払っていたことになります。絞った後の100円は、これと比べれば大幅に安い数字です。
予約の計測ができない構成なら、代わりの物差しを用意します。例えば次のような方法です。
- 広告専用のクーポン名や合言葉を広告文に入れ、来店時に確認する
- 広告のリンク先を、計測タグを置ける自店のホームページやLINEの友だち追加ページにして、そこから予約へ進んでもらう
- 新規客への「何を見て来ましたか」の聞き取りに、Instagram広告の選択肢を入れる
完全な計測でなくても、クリック以外の物差しが1つあるだけで、広告を続けるかどうかの判断ができるようになります。
設定を直す際の進め方
配信中の広告を直すときは、次の順番が安全です。
- まず一時停止する。削除ではなく停止にしておけば、設定も実績も残ります
- 内訳(地域・年齢性別・配信面)を全期間で書き出して保存する。修正後と比べる基準になります
- 地域・性別・年齢を修正し、広告文に特定の地域名が入っているかも確認する
- 再開したら、1〜2週間後に内訳を開いて、実績が設定どおりかを確かめる
先の例では、まず停止し、再開するなら「半径10〜15km・女性・40歳以上」に直してから、という判断になりました。そのままの設定で再開するという選択肢は外しています。
よくある質問
Q. 日予算が数百円の広告でも、見直す意味はありますか?
あります。先の例は日予算500円弱でしたが、8か月で約11万円になっていました。少額の広告は誰も確認しないまま長く続くため、累計では大きくなります。少額だからこそ、1回は内訳を開いて確認する価値があります。
Q. 地域を絞ったら、配信がほとんど出なくなりました。
半径が狭すぎるか、年齢・性別の条件と重なって対象が小さくなりすぎています。まず半径を一段広げます。それでも足りなければ年齢の幅を広げます。地域を県全域や全国に戻すのは、来店型の店舗では最後の手段です。
Q. 「日本」に設定した覚えがないのですが。
広告の作成経路によっては、地域の初期値が国単位になっていたり、設定画面が簡略で目に入りにくかったりします。誰の操作が原因かを探すより、現在の設定と内訳を確認して直すほうが早く済みます。担当者が変わったときや、外部に運用を任せているときも、地域と内訳の2か所は自分の目で見ておくことをおすすめします。
Q. Google広告でも同じことが起きますか?
起きます。Google広告にも地域設定があり、来店型の店舗では同じ考え方で絞ります。Google検索広告での絞り方は「地域の美容室がGoogle広告で失敗する理由」で扱っています。
まとめ
- 来店型の店舗のMeta広告は、クリエイティブより先に広告セットの「地域」を確かめる
- 設定だけでなく、内訳(地域別)で実際の消化先を見る。地元の県が上位に無ければ広すぎる
- 「クリック単価が安い」は、ローカル店舗では配信地域が広すぎるサインとして読む
- 半径は実際の来店距離から決める(都市部2〜5km・郊外10〜15km)。性別・年齢はAdvantage+ オーディエンスの扱いに注意する
- 絞るとクリック単価は上がる。比べるのは商圏内の1クリックにいくら払っていたか
- 予約が計測できない構成では、合言葉や聞き取りなど、クリック以外の物差しを1つ用意する
広告は、出すこと自体よりも「誰に届いているか」を確かめる作業のほうに価値があります。graciautoでは、店舗のホームページやLINE公式アカウントと合わせて、広告の配信設定の点検も行っています。広告費の行き先が気になる方は、お問い合わせからご相談ください。