LINE公式アカウントの一斉配信はグループLINEに届かない|多店舗のスタッフグループへ自動配信する構成と通数の試算
LINE公式アカウントの一斉配信はグループLINEに届かない|多店舗のスタッフグループへ自動配信する構成と通数の試算
「LINE公式アカウントからグループLINEに配信できるか」への答えを先に書きます。
管理画面の「メッセージ配信(一斉配信)」は、グループトークには届きません。 届く相手は、そのアカウントを個別に友だち追加したユーザーだけです。グループへ送るには、Messaging APIのpush送信で宛先にグループIDを指定する必要があり、その場合の通数はグループの参加人数分が消費されます。店舗ごとのスタッフグループが何十もある多店舗の本部なら、「店舗数×グループ人数×月間回数」を先に試算し、その通数が収まる料金プランを決めてから仕組みを作るのが正しい順番です。
この記事では、名古屋圏で20店舗超を展開する白髪染め専門サロンのフランチャイズ本部で、本部のLINE公式アカウントから全28店のスタッフグループへ一斉案内と店舗別の定期リマインドを自動配信する仕組みを組んだ実例をもとに、仕様の壁・構成・通数の試算・設計時に決めておくことを書きます。
弊社は名古屋・愛知を中心に、美容室・店舗ビジネスのLINE公式アカウント構築と多店舗運営の自動化を実務として担当しています。Messaging APIの登録からWebhook疎通までの基本手順はClaude CodeでLINE Botを作る手順に、店舗ごとのアカウントを増やす進め方は店舗ごとのLINE公式アカウントを増やすときの進め方に書いているので、本稿は「グループに配る」構成に絞ります。
仕様の確認|届く相手・グループへの送り方・通数の数え方
最初に、LINE公式アカウントとグループトークの関係で押さえておく仕様は3点です。いずれも2026年9月時点でLINE公式のドキュメントで確認しています。
- 管理画面の一斉配信は個人宛のみ。友だち追加したユーザーのトーク画面に届く機能で、アカウントを招待したグループトークは配信対象になりません。設定で変えられる話ではなく、機能の作りがそうなっています
- グループへ送る手段はMessaging APIのpushだけ。宛先(to)にグループIDを指定します。絞り込み配信(narrowcast)はグループに使えず、複数宛先への送信(multicast)はユーザーIDしか受け付けません
- 通数は「送信対象の人数」で数える。LINE Developersの説明では「4つのメッセージオブジェクトを5人のトークルームに送ると5通」。1回のpushで吹き出しを複数送っても通数は増えず、グループの人数分がそのまま消費されます
補足が2点あります。管理画面の「チャット」から手打ちでグループに送るのは、チャットの送受信が通数の対象外なので無料です。グループが1つか2つなら、仕組みを作らず手で送るのが最も安上がりです。また、チャットとWebhookは2022年12月のアップデート以降、応答設定で両方ONにして併用できます。自動配信の仕組みを入れても、担当者が普段どおりチャットで返す運用は壊れません。
実例|28店のスタッフグループへ本部から配る構成
フランチャイズ本部が、各店舗のスタッフグループ(1グループ約10人)に本部のスタッフ連絡用LINE公式アカウントを招待済みで、やりたいことは2つでした。
- 全店一斉の案内。入荷予定、薬剤の変更、注意事項など
- 店舗別の定期リマインド。お客さま向けLINE配信のリマインドを月4回、クーポン設定の提案を月1回、店舗ごとの曜日・時刻で
これを本部の担当者がグループごとにコピペで貼る運用は、28回の貼り付けを月に何度も繰り返すことになり、漏れと遅れが出ます。最初に検討した選択肢を比べたのが次の表です。
| 選択肢 | スタッフ側の変更 | 定期配信 | 費用の目安 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 本部担当者が手動で転送 | なし | 人が覚えている限り | 人件費のみ | 店舗数が増えると漏れる |
| LINE WORKSを導入 | 全員にアカウント発行 | 社内メンバーの部屋のみ・7日先まで・1アカウント10件まで | 30ユーザー超は1ユーザー540円/月〜 | 個人LINEのユーザーがいる部屋ではBotが使えない |
| LINE公式アカウント+Messaging API push | なし(普段のグループのまま) | 自前の仕組みで自由に | ライトプラン月額5,000円〜 | 採用 |
LINE WORKSを外した理由は明確で、LINE WORKSのBotは、個人のLINEユーザーを含むトークルームでは動かないからです。店舗スタッフが個人のLINEでグループを作っている以上、Botで自動配信するにはスタッフ全員をLINE WORKSに移す必要があり、約280人分のアカウント費用は月15万円を超えます。LINEユーザーとの間に作れるのは「グループ」ではなく最大100人の「複数人トーク」で、標準の送信予約も社内メンバーだけの部屋にしか使えません。
採用した構成は次のとおりです。
[本部の管理画面] ─ 今すぐ送信 / 予約 / 定期 ─▶ [GAS] ─ Messaging API push (to=groupId) ─▶ 各店のスタッフグループ
▲
Webhook(join / message イベント)
─ source.groupId を自動収集 → グループ名で店舗と照合 → タグ付け
[スプレッドシート] = 裏側のデータベース(グループ一覧・配信ルール・送信ログ)
管理画面はGoogle Apps Script(GAS)のHtmlServiceで作り、LINEからのWebhookを受ける処理と同じプロジェクトで動かしています。スプレッドシートは人が操作する画面ではなく、グループ一覧・配信ルール・送信ログを持つ裏側のデータベースに降格させました。送信先は「全店」「オーナーのグループだけ」「指定した店舗だけ」をタグとチェックで選び、送信前の確認画面に「何グループ・何通・今月の残り通数」を出します。定期配信は10分おきの時間トリガーが当日の該当ルールを拾って送ります。
通数の試算|店舗数×グループ人数×月間回数
仕組みを作る前に決めるべきなのが、この試算です。実例の前提(28店・1グループ約10人)で計算すると次のようになります。
| 配信 | 計算 | 月間通数 |
|---|---|---|
| 全店一斉 1回 | 28店 × 10人 | 約280通 |
| 全店一斉 週1回+月1回(月5回) | 280通 × 5回 | 約1,400通 |
| 店舗別の定期リマインド 月5回 | 28店 × 10人 × 5回 | 約1,400通 |
| 合計 | 約2,800通 |
2026年9月時点のLINE公式アカウントの料金プランは、コミュニケーションプラン(月額0円・200通まで)、ライトプラン(月額5,000円・5,000通まで)、スタンダードプラン(月額15,000円・30,000通まで、超過分は1通3円)です(いずれも税別)。上の試算では、無料枠の200通では全店一斉を1回送っただけで超過します。月2,800通ならライトプランに収まり、月額5,000円が自動配信の実費です。
試算で押さえるポイントは3つです。
- 人数は「グループの参加人数」で見る。友だち数ではありません。グループの人数はAPIで取れるグループ情報(メンバー数)から自動で拾えるので、手で数えなくて済みます
- 画像を添付しても通数は増えない。画像と本文を1回のpushにまとめれば、通数は人数分のままです
- 無料枠を超えるとAPIは429(上限超過)を返し、送信されない。別の案件で、無料プランのままAPIからグループへ送って429で止まった実例があります。プランの切り替えは仕組みの完成後で構いませんが、テスト送信の段階から月間の残り通数を意識しておく必要があります
設計時に決めておくこと
構成が決まったら、作る前に次の5点を決めておくと手戻りがありません。
1. グループIDは手で集めない
グループIDは管理画面のどこにも表示されません。Webhookに届く参加(join)や発言(message)のイベントに含まれる source.groupId から取ります。さらにグループ情報の取得APIでグループ名が取れるので、グループ名に店舗名を含めておけば、店舗との紐付けまで自動化できます。実例では、各グループで誰かが一言発言するだけで一覧に自動登録され、店舗名と照合して「店舗」タグが付く形にしました。なお、アカウント側の設定で「グループ・複数人トークへの参加を許可する」をONにしておかないと、そもそもグループに招待できません。
2. 送信先はタグで指定できるようにする
「全オーナーのグループに注意事項」「テスト用のグループだけに試し送り」のような指定は、グループ1つずつのチェックでは運用に耐えません。グループ一覧に「店舗」「オーナー」「本部」「テスト」のタグ列を持ち、送信先を「タグの集合+個別追加−除外」で決める形にしておくと、後からグループが増えても配信ルールを直さずに済みます。
3. 定期配信は「送信前に最終送信日時を書く」
時間トリガーで定期配信を回すとき、送信処理の途中でエラーになった場合に「送れなかった」のと「二重に送った」のとでは実害が違います。後者は通数も2倍消費します。実例では、送信の前に最終送信日時を記録し、送信が失敗しても同じ日に再送しない設計にしました。欠送は人が気づいてチャットで補えますが、二重送信は取り消せません。
4. 画像は自社サーバーに置く
画像付きの配信では、LINE側がHTTPSで取得できる画像URLが必要です。Googleドライブの共有URLはLINE側で読めないことがあるため、自社のサーバーに受け口を作って画像を置き、そのURLを渡す構成にしました。管理画面から画像を選ぶと縮小してアップロードし、pushにはURLだけを載せます。
5. 管理画面のURLは自社ドメイン経由で配る
GASのWebアプリURLをそのまま配ると、スマホでGoogleドライブのアプリに横取りされて開けない、再デプロイでURLが変わる、という問題が起こります。この対処はGASのWebアプリURLをそのまま配ってはいけないに書いたとおりで、本部の担当者に渡すURLは自社ドメインで固定しておきます。
起こりうるリスクと予防策
実装と運用で起こりうる事象と、設計段階で入れておく予防策です。
- 同じグループが二重登録されて、送信が2倍になる。LINEのWebhookは1イベントごとに1リクエストで届き、同じグループの発言がほぼ同時に着くことがあります。登録処理を排他制御するだけでは、書き込みが確定する前に別の処理が読み取って重複行を作る余地が残ります。排他制御に加えて、書き込みを確定させてから解放し、送信側でもグループIDの重複を1つに畳む三段構えにしておくと、通数の二重消費を防げます
- 拡張ツールを接続済みのアカウントを流用して、切り分けが難しくなる。Lステップやエルメなどの拡張ツールはアカウントのWebhookを自分の受け口に向けます。別の案件では、拡張ツールに接続したアカウントでグループへpushしたところ400(送信失敗)が返り、原因の特定に至らないまま切り分けに時間を取られました。グループ配信には、拡張ツールを接続していない専用のアカウントを用意するのが安全です。返信しない・届かないときの切り分け順はLINE Botが返信しないときの切り分け手順を参照してください
- コードを直したのに管理画面が変わらない。GASのWebアプリは「デプロイした版」で動きます。エディタでコードを保存しても本番は変わらず、「デプロイを管理→新バージョン」で初めて反映されます。一方、時間トリガーは常に最新のコードで動くため、「定期配信は直ったのに画面は直らない」という状態が起こり得ます。改修手順に「新バージョンでデプロイ」を必ず含めます
- 退出したグループへ送り続ける。アカウントがグループから外された(leave)イベントで自動的に無効化します。逆に、人が画面で止めたグループを発言だけで自動復帰させないようにし、自動復帰はアカウント自身が再招待されたときに限ります
- 管理画面を誰でも開ける。WebhookとURLを共用する都合上、デプロイのアクセス権は「全員」になります。画面側にPINを設け、一定回数の失敗でロックする程度の防御は最低限入れておきます
導入の手順
実例で踏んだ順番です。
- 通数を試算し、プランを決める。店舗数×グループ人数×月間回数。無料枠を超えるなら、完成後にライトプランへ切り替える前提で進める
- Messaging APIを有効化し、グループ参加を許可する。アカウントの管理者権限で有効化する。既に拡張ツールに接続されているアカウントは避ける
- Webhookの受け口を用意し、各グループで一言発言してもらう。グループIDが自動で集まり、グループ名から店舗と紐付く
- テスト用グループにタグを付け、テスト送信する。本文・画像・送信先の確認画面が正しく出るかを見る
- 本番の配信ルールを登録し、プランを切り替える。全店一斉の頻度と店舗別の定期リマインドを登録し、初回の全店送信は本部の担当者が送信ログを目視する
よくある質問
Q. 管理画面の「チャット」からグループに送れば無料なら、仕組みは要らないのでは
グループが数個で、送る回数も月に数回なら、チャットの手打ちで十分です。仕組みが必要になるのは、店舗数が2桁を超えて貼り付けの漏れが出始めたとき、または「毎週月曜9時に各店へ」のように人が覚えていられない定期配信を入れたいときです。
Q. スタッフ全員に友だち追加してもらえば、一斉配信で届きますか
個人のトーク画面には届きますが、店舗のグループでの会話の流れには入りません。「本部からの案内をグループで見て、その場で店長が補足する」という使い方ができないのが実務上の差です。加えて、退職・入社のたびに友だちの棚卸しが要ります。グループ宛なら、店舗のグループにスタッフを入れ替えるだけで済みます。
Q. LINE WORKSではできませんか
スタッフ全員がLINE WORKSのアカウントを持つ前提なら、Botも送信予約も使えます。スタッフが個人のLINEのままで、そのグループに配りたいなら、LINE WORKSのBotは使えません。
まとめ|先に通数、次にグループIDの自動収集
LINE公式アカウントからグループLINEへ配信するときの要点を整理します。
- 管理画面の一斉配信はグループに届かない。グループへはMessaging APIのpushで、宛先にグループIDを指定する
- 通数はグループの参加人数分。「店舗数×グループ人数×月間回数」を先に試算し、無料枠200通を超えるならライトプラン(月額5,000円・5,000通)を前提にする
- グループIDはWebhookで自動収集し、グループ名で店舗と紐付ける。送信先はタグで指定する
- 定期配信は送信前に最終送信を記録し、二重送信より欠送を選ぶ
- 拡張ツールを接続していない専用アカウントで運用し、画像は自社サーバーに置き、管理画面のURLは自社ドメインで固定する
実例の本部では、管理画面と画像の受け口の設置、Webhookによるグループの自動登録までが動いており、全店のグループ収集とテスト送信を経て本番の定期配信に移る段階です。月額の実費は、ライトプランの5,000円です。
弊社では、多店舗展開する美容室・フランチャイズ本部向けに、LINE公式アカウントの構築から店舗連絡の自動化までを一貫して支援しています。同じ課題を抱えている本部の方はお問い合わせからご相談ください。