フランチャイズ本部の開業サポートは「丸投げ・半分・ゼロ」の3段で出す|項目の切り方と単品売りをしない理由、士業の独占業務との線引き
フランチャイズ本部の開業サポートは「丸投げ・半分・ゼロ」の3段で出す|項目の切り方と単品売りをしない理由、士業の独占業務との線引き
フランチャイズ本部として加盟店の開業を支援していると、2店舗目・3店舗目を出すオーナーから必ずこう聞かれます。「開業のサポートは何をどこまでやってもらえるのか」「自分でやる部分があるなら、その分は安くならないのか」。
1店舗目は加盟金や研修費の中に曖昧に含めて進められます。しかし既存オーナーの多店舗化が始まると、そこが曖昧なままでは通用しません。「以前は無かった費用だ」という指摘が出て、価格の説明ができなくなります。
結論から書きます。開業サポートは「丸投げ/半分/ゼロ」の3段階で出し、項目ごとの単品売りはしない。そして項目を決める前に、士業の独占業務にあたる作業を先に外す。この2つを最初に決めておけば、料金表は一度作れば長く使えます。
この記事では、カラー専門店の美容室フランチャイズで実際に組んだ開業パックの設計を例に、項目の切り方・単品売りをしない理由・独占業務との線引き・価格の決め方を順に説明します。店舗系フランチャイズ本部の方はもちろん、開業支援を有償メニューに入れている制作会社・コンサルにもそのまま効く内容です。
結論:3段階にして、途中の選択肢を作らない
最初に完成形を示します。名古屋を拠点にするカラー専門店の美容室フランチャイズで組んだ形が、次の3プランです。
| プラン | 内容 | 価格(税別) |
|---|---|---|
| 丸投げパック | 全9項目 | 400,000円 |
| ハーフパック | 前半5項目(固定) | 200,000円 |
| ゼロ | 本部の支援なし。オーナー自身で進める | 0円 |
重要なのはハーフの中身を本部側で固定してしまうことです。「9項目から好きな5つを選んでください」という形(チョイス制)にはしません。理由は後述しますが、選ばせた瞬間に料金表が破綻します。
そしてゼロを正式なプランとして明記すること。これが入っていないと「必ず買わされる費用」に見えます。「自分でやるという選択肢もある。その場合はこれをご自身でやっていただく」と書いてあるだけで、価格の納得感がまったく変わります。
項目は「時系列順」に並べる
項目の並び順は、本部の都合(金額の大きい順・工数順)ではなく、オーナーが実際に動く順番にします。出店準備は物件探しから始まって開店まで一本の線でつながっているので、時系列に並んでいれば読んだだけで全体像が入ります。
実際の9項目はこの順番です。
- 商圏分析表 — 候補地の人口構成・競合密度・通行環境を表にして出す
- 事業計画書の作成 — 銀行提出用。売上計画・資金繰り・返済計画まで
- 内装パース — 3Dパースと配置案
- 開業準備サポート — 手続きの流れ・必要書類・スケジュールの説明、構造設備基準への適合確認、事前相談と検査の現地立ち会い
- 採用 — 求人サイトの運営管理・応募対応・面接対応または日程調整
―― ここまでがハーフパック ――
- 設備・備品の代理購入 — 業務用ディーラーでの発注と検品
- 現地組立代行 — ロッカー・カウンター・椅子・ドレッサーの組み立て
- 店舗備品の買い出し代行 — ネット購入品・生活雑貨・ホームセンター品
- オープン2か月のスタッフサポート — 技術以外のスタッフからの相談を、オーナーに代わって本部が直接受ける
ハーフに入れるかどうかの判断基準
前半5項目と後半4項目を分ける線は、「本部にしかできないか、手間を肩代わりしているだけか」です。
前半は情報とノウハウの非対称があるものです。商圏データの読み方、銀行に通る計画書の型、保健所の基準を満たす図面の考え方は、本部が何店舗も出してきたから持っている資産です。オーナーが自力で取りに行こうとすると時間がかかる、あるいは精度が出ません。
後半は違います。買い出しも組み立ても、時間さえあればオーナー本人にできます。ここは手間の代行です。
この線引きは机上で決めきらないほうがよく、実態を見て動かすことになります。最初は保健所まわりと採用を「本部にしかできない後半」に置いていましたが、既存オーナーは1店舗目で一度経験しているため自力でこなせる、という判断でハーフ側に降ろしました。「既存オーナーが自分でできるか」を基準にすると線は動きます。2店舗目以降を主な対象にするなら、そこを見て決めてください。
「依頼しない場合にオーナーが何をするか」を必ず併記する
料金表で最も効くのは、価格でも項目名でもなく、依頼しなかった場合に自分の手元に何が残るかの記述です。
各項目を2列で書きます。
| 項目 | 本部が行うこと | ご自身でされる場合にオーナーが行うこと |
|---|---|---|
| 商圏分析表 | 候補地の人口・競合・通行環境を調査し比較表で提出 | 自治体統計と現地確認で候補地を比較。競合店の客層は時間帯を変えて複数回確認 |
| 事業計画書 | 銀行提出用の数値計画を作成。面談で聞かれる点の想定問答まで | 売上・原価・人件費・返済の計画を作成し、金融機関の書式に合わせて清書 |
| 現地組立代行 | 指定日に本部スタッフが訪問し、什器を組み立てて設置 | 工具を用意し、説明書を見ながら組み立て。人手が要るものは手配 |
この形にしておくと、価格交渉の場面で説明が要らなくなります。「20万円が高い」という話ではなく、「この作業を自分でやるか、任せるか」の話になるからです。
同時に、依頼した場合の範囲も同じ精度で書く必要があります。たとえば採用を「面接対応」とだけ書くと、採用の決定まで本部がやると読まれかねません。「一次面接まで。採用の可否はオーナーが決定」と明示します。開業直後のトラブルのかなりの部分は、この範囲の書き方の粗さから起きます。
単品売りをしない3つの理由
「必要なものだけ選びたい」というのは、オーナーからすればごく自然な要望です。それでも単品売りを断る理由が3つあります。
1. 単品価格から全体を逆算される。 9項目に個別価格を付けると、合計と40万円の差が見えます。「まとめると割高/割安」という議論になり、パックそのものの説明が要らない場所で時間を使うことになります。
2. 工数が不均等なので、重い項目だけ選ばれる。 商圏分析と組立代行では本部の負荷がまるで違います。単品で並べると、当然ながら手間のかかる項目から売れていきます。単価を工数に厳密に比例させれば解決しますが、今度は価格表が複雑になりすぎます。
3. 見積りが毎回変わり、資料が使い回せない。 3プランなら資料は1枚で済みます。組み合わせ自由にした瞬間、加盟店ごとに見積書を作ることになります。フランチャイズの本部業務は「同じ資料を何度も使えること」が効率の源泉なので、ここを崩すのは得策ではありません。
なお、プランの外側にある単品リクエストも受けないほうが安全です。たとえば「ハーフパック+代理購入だけ」「代理購入だけ」を受けると、次の段落で説明する価格設計が崩れます。
実質額をそろえて、値引き交渉の土俵を作らない
3プランの価格は、単純な足し算ではなく選んだ結果の実質負担が近くなるように設計しておくと、比較そのものが起きにくくなります。
この例では、設備・備品の代理購入(項目6)がその役割を持っています。業務用ディーラーの上位会員価格で仕入れると、110万円前後の設備一式で1割ほど安くなります。金額にして約10万円です。
- 丸投げ 40万円 − 仕入れ差額 約10万円 = 実質 約30万円
- ハーフ 20万円 + 仕入れ差額なし = 実質 約30万円
実質が同じなら、内容の多い丸投げのほうが合理的な選択になります。ここで大切なのは、この計算を資料に書かないことです。「丸投げなら10万円お得」と打ち出すと、値引き商法の見え方になります。設定としてそうしておき、気づいた人が得な方を選ぶ。それで十分です。
代理購入を入れるときは、次の2点を運用ルールとして決めておきます。
- 代金は前払い。 本部が110万円を立て替える形にすると、オーナーの支払いが遅れたときに本部の資金繰りを直撃します
- 発注は本部名義になるため、初期不良の窓口も本部になる。 検品立ち会いを成果物に含め、いつ誰が確認したかを残す
士業の独占業務を先に外す(ここが最大の落とし穴)
開業サポートを有償メニューにするときに、項目を決めるより先にやるべきなのがこの確認です。後から気づくと、配布済みの資料を全部差し替えることになります。
(以下は法令の一般的な考え方の整理です。実際の適用は個別の事情で変わるため、メニューを確定する前に所轄の窓口や士業に確認してください。)
行政書士法:2026年1月1日の改正で逃げ道が消えた
行政書士法1条の2および19条により、報酬を得て業として「官公署に提出する書類を作成する」ことは行政書士の独占業務です。美容所開設届のような「届出」も、官公署に提出する書類である以上は対象に含まれます。罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
そして2026年1月1日施行の改正で、次の2点が加わりました。
- 業務制限の条文に「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が追加された。会費・コンサル料・パック代・加盟金——名目を変えても、対価関係があれば同じ扱いになります
- 両罰規定が入り、作業した個人だけでなく所属法人にも罰金が科されるようになりました
ここから、実務上よく使われてきた2つの整理が使えなくなります。
- ❌ 「書類作成は無料、代行費用だけいただく」 — 作成から申請・受領までが一連の手続きとして一体で評価されるため、通用しません
- ❌ 「パック40万円のうち、この項目だけ無料」 — 同じ理由で弱い整理です。そもそも「なぜここだけ無料なのか」を説明できません
判断の目安はこうなります。
| 内容 | |
|---|---|
| ⭕ セーフ | 制度の説明、必要書類とスケジュールの案内、記入上の注意点の説明、本人が書いたものへの一般的な助言、事前相談や検査の現地立ち会い |
| ⚠️ グレー | 下書き・ひな形の提供、提出図面の作図、大幅でない添削 |
| ❌ アウト | 申請書類の作成、代理提出 |
| ⭕ 対象外 | 銀行提出の事業計画書(銀行は官公署ではない)、採用支援 |
| ❌ 対象 | 助成金・補助金の申請書 |
表記だけ変えても意味がない
ここが一番の要点です。実体で判断されます。 項目名を「保健所手続き代行」から「開業準備サポート」に変えても、裏で本部が申請書の下書きを作り図面を引いていれば、評価は変わりません。
表記を変えるなら、実務も一緒に落とす必要があります。先ほどの項目4がまさにそれで、当初「申請書の作成/添付図面の作成/保健所への提出/検査の立ち会い」としていた範囲を、次の形に作り直しました。
- 手続きの流れ・必要書類・スケジュールの説明
- 内装プラン段階での構造設備基準(面積・区画・洗場・照明・換気・消毒設備)への適合確認とアドバイス
- 書き方についての質疑応答
- 事前相談と開設検査の現地立ち会い
- ※申請書類の作成と代理提出は含まない(オーナー名義で提出)
提出用の図面は、内装業者が作る平面図をオーナーがそのまま使います。本部が作図するとグレーゾーンに入るためです。
現実的な打ち手は「提携士業に外注してパック代に含める」
範囲を削ると、オーナー体験は確実に落ちます。「全部やってもらえると思っていた」となるからです。
これを解決する方法が、提携行政書士に外注し、その費用をパック代に含めてしまうやり方です。美容所開設届の行政書士報酬相場は5〜10万円。40万円のパックであれば十分に吸収できます。
資料には「提携行政書士による申請代行(費用はパック料金に含みます)」と書きます。オーナーから見た体験は「本部に頼めば手続きが終わる」で変わらないまま、本部側のリスクだけがゼロになります。営業上も「本部が無料でやります」より説得力があります。多店舗展開しているフランチャイズなら継続案件になるので、単価の交渉余地もあります。
社労士・税理士の線引きも同時に確認する
開業サポートに雇用や経理の項目を入れるなら、ここも押さえておきます。
- 社会保険労務士の独占 — 就業規則と36協定は行政官庁への届出書類なので独占業務。一方、雇用契約書と労働条件通知書は本部が扱えます(届出書類ではないため)
- 税理士の独占 — ①税務代理 ②税務書類の作成 ③税務相談 の3つ。単純な記帳代行はここに含まれません。ただし決算書・申告書の作成と節税の助言は対象になります
つまり、「勤怠表・有給休暇管理簿・給与テーブルのひな形を渡す」「現金の締め方と日計表の型を渡す」あたりまでは本部の仕事として成立します。就業規則の作成、助成金の申請、決算まわりは洗い出しと専門家紹介にとどめる、というのが安全な設計です。
価格を据え置くか、上げるか
項目を作り込んでいくと、必ず途中で項目が増えます。この例でも、当初の構成から組立代行・買い出し代行・スタッフ2か月サポートの3項目が後から加わりました。
増えた分を価格に反映するかどうかは、次の観点で判断します。
- その項目に本部の追加コストが発生するか。 組立代行や買い出しはスタッフの人日が直接かかるので、コスト側です
- その項目が意思決定を後押しするか。 「オープン2か月のスタッフサポート」は、初めて人を雇うオーナーの不安に直接効きます。売るための項目なので、価格を上げてまで付ける性質のものではありません
- 既存オーナーへの説明が立つか。 一度提示した価格を上げるのは、それ自体が説明コストになります
この例では、項目が3つ増えたあとも丸投げ40万円/ハーフ20万円を据え置きました。追加分は「同じ価格で内容が増えた」という説明ができ、既存オーナーとの関係でもプラスに働くためです。
まとめ:料金表を作る前に確認する5項目
フランチャイズ本部の開業サポートを商品化するときの手順を、チェックリストにまとめます。
- 士業の独占業務にあたる作業を先に洗い出す。 官公署に提出する書類の作成・提出は外す。外すか、提携士業に外注してパック代に含める
- 項目はオーナーが動く時系列で並べる。 金額順・工数順にしない
- 「本部にしかできないか/手間の代行か」で前半と後半に割る。 前半をそのままハーフパックにする
- 各項目に「依頼しない場合にオーナーが行うこと」を併記する。 価格の説明がここで終わる
- 3プランで固定し、単品と組み合わせは受けない。 実質負担が近くなるよう設計し、その計算は資料に書かない
開業サポートは、本部にとっては「加盟店を増やす商品」であると同時に、「本部の工数が最も膨らむ場所」でもあります。範囲が曖昧なまま走ると、無償の作業が積み上がったうえに、オーナーの期待にも届きません。1枚の料金表を作り切っておくことが、結果的に双方を守ります。
そしてもう一度だけ書きます。表記を変えるなら実務も変える。法令まわりの整理は、書き方の工夫で乗り切れる領域ではありません。