店舗集客は広告とSEOどちらが先か|同じ28日間で両方回した実測で分かった向き不向き
店舗集客は広告とSEOどちらが先か|同じ28日間で両方回した実測で分かった向き不向き
「広告とSEO、どちらから始めるべきですか」。店舗経営者の方から最も多くいただく質問のひとつです。
先に結論を書きます。どちらが先かを決めるのは、予算でも業種でもなく、「自社の商材がどんな言葉で検索されているか」です。
- 「〇〇が動かない」「〇〇のやり方」のような困りごとの言葉で検索される商材 → SEO(記事)が先
- 「〇〇制作」「〇〇代行」のような成果物を名指しする発注の言葉に検索の母数がある商材 → その言葉に絞った少額の広告を並走させる価値がある
- 「地域名×業種」のような抽象的な言葉しか思いつかない商材 → 広告から入るのは危険。そもそも検索されていない可能性を先に確かめる
なぜこう言い切れるのか。弊社は自社サービスの集客で、同じ28日間に検索広告と自然検索(SEO)を並走させました。結果は、広告291セッションで問い合わせ0件、自然検索と直接流入の787セッションで問い合わせ12件。この記事では、その実測の中身と、そこから導いた「広告が向く場合・向かない場合」の判断基準、そして広告をやるなら最初に決めておくべき撤退ラインを順に書きます。
実測:同じ28日間、広告と自然検索で何が起きたか
前提を書いておきます。対象は弊社(名古屋のWEB制作会社)の自社サイトです。BtoB商材(LINE公式アカウント構築・店舗のWEB支援)ですが、後述するとおり構造は店舗ビジネスの集客でも同じです。
- 広告:Yahoo!検索広告3キャンペーン(各・日予算1,500円)。計測タグ・コンバージョン設定済み
- SEO:実務の記録をもとにした記事の公開と、既存記事のタイトル・本文改善
同じ28日間の結果がこちらです。
| 流入経路 | セッション数 | フォーム問い合わせ | LINE友だち追加クリック |
|---|---|---|---|
| 自然検索(Organic) | 446 | 5件 | ―(広告以外の合計4件) |
| 直接流入(Direct) | 341 | 7件 | ―(同上) |
| 検索広告(Paid) | 291 | 0件 | 5件 |
セッション数だけを見ると、広告は自然検索の6割強まで来ています。日予算1,500円×3本の少額でも、訪問者数は買えるということです。
しかし問い合わせは広告経由が0件、自然検索と直接流入の合計が12件でした。直接流入の7件は、URLを直接打つかブックマークから来た訪問です。BtoBでは、過去に検索や紹介でサイトを知った人が、検討が進んだ段階で直接戻ってきて問い合わせるという動きが典型で、この7件もその型に近いと考えています(断定はできないため、確実に検索起点と言えるのは5件です)。
つまり同じ期間・同じサイト・同じ問い合わせフォームで、訪問の「量」は広告で買えたが、問い合わせという「質」は検索経由に集中した。これがこの記事の出発点です。
なぜ差が出たのか:検索の言葉には3つの性質がある
「広告が下手だったのでは」と思われるかもしれません。半分はそのとおりで、後述する改善の余地はありました。ただ、キーワード単位まで分解すると、もっと構造的な理由が見えてきます。検索の言葉は、性質でおおむね3つに分かれます。
1. 困りごとの言葉:SEOが強く、広告には向かない
自然検索側で最も成果を出したのは、「(LINE公式アカウントの)応答メッセージが反応しない」というトラブル解決の検索でした。「反応しない」「返信こない」など表記ゆれが6パターンあり、これを1本の記事でまとめて受けた結果、その記事単体で28日間に770表示・平均掲載順位6.4位まで育ちました。
この種の言葉に広告を出すのは筋が悪いです。困りごとを検索している人は「いますぐ無料で解決したい」のであって、発注先を探していません。クリックはされても問い合わせにはなりにくい。一方で、解決記事を読んで「この会社は分かっている」と感じた人の一部が、後日、発注検討の段階で戻ってきます。先ほどの直接流入7件は、まさにこの受け皿です。
2. 成果物を名指しする言葉:広告が唯一機能した場所
28日間で広告が唯一コンバージョン(LINE友だち追加)を取ったのは、「リッチメニュー 制作」というキーワードでした。8クリック・607円で1件です。
「LINE構築」のような抽象的なサービス名ではなく、具体的な成果物+制作・代行という形の言葉です。この形で検索する人は、欲しいものが自分で特定できていて、あとは頼む先を探しているだけ。だから広告文と噛み合えばすぐ動きます。美容室で言えば「白髪ぼかし ハイライト ○○市」、士業なら「会社設立 定款 作成代行」のような言葉が同じ型です。
広告に張る価値があるのは、この型の言葉に検索の母数がある商材です。逆に言うと、この型の言葉が思いつかない商材は、広告の勝ち筋を最初から欠いています。
3. 抽象的なカテゴリの言葉:そもそも検索されていない
一番の落とし穴がここです。弊社は当初、「業種×サービス」の掛け合わせ(「美容室 ホームページ制作」のような形)でキーワードを18語組みましたが、18語すべてが表示回数0でした。広告の審査は通り、配信ステータスも正常。単に、その言葉で検索する人がいなかったのです。
「地域名×AI」のような言葉も同じで、検索データを実際に引くとクエリ自体が存在しないことがあります。頭の中では「検索されそう」に思える言葉ほど、この罠にはまります。広告は「検索されている言葉」にしか出せません。検索母数の確認より先に予算を積むのは、順番が逆です。
判断基準:広告が向く場合・向かない場合
ここまでの実測を判断基準の形に整理します。
| 自社の商材が検索される言葉 | 先に張るべき施策 | 理由 |
|---|---|---|
| 「〇〇制作」「〇〇代行」など成果物が明確な発注語がある | その語に絞った少額広告+SEO並走 | 発注直前の人に最短で会える。1件607円のような効率が出うる |
| 「動かない」「やり方」など困りごと語が中心 | SEO(解決記事) | 広告ではクリック費用だけかかる。記事は信頼の受け皿になり資産として残る |
| 抽象的なカテゴリ語・地域×業種しか思いつかない | まず検索母数の確認。店舗ならGoogleビジネスプロフィール(MEO)優先 | 母数のない語には広告も出せない。地図検索は別の土俵で戦える |
もうひとつ、時間軸の違いも判断材料になります。SEO側では、28日間の改善で検索10位以内に入るクエリが33件から85件に増えました。記事は公開後も残り続け、止めても流入は消えません。広告は出稿を止めた瞬間にゼロに戻ります。急ぎの母数は広告で買えるが、買えるのは訪問までで、問い合わせまで買えるかは言葉の性質次第。これが両方回して分かったことです。
広告を回すなら:予算より先に決めるべき4つのこと
「発注語に母数がある」と確認できて広告を始める場合も、設計を誤ると予算だけが消えます。弊社の運用で実際に起きたこと・起こりうることを、予防の形でまとめます。
1. 計測を先に完成させる。 コンバージョンタグが入っていない状態では、成果は構造上ゼロと表示され続けます。この状態で1ヶ月回すと「LPが悪いのか、広告が悪いのか、そもそも計測されていないのか」の区別がつかず、その期間の数字は判断材料として使えません。出稿前に、テスト送信でコンバージョンが記録されることを必ず確認してください。
2. キーワードはフレーズ一致で組む。 部分一致(BROADマッチ)は、発注語を含むキーワードでも無関係な検索に広がります。弊社の実測では部分一致5語だけで5日間に18,049円(アカウント全体の71%)が無関係なクリックに流れました。詳細はリスティング広告の部分一致で予算が溶ける仕組みに書いたとおりです。
3. クリック単価の上限を絞りすぎない。 少額運用では「上限50円」のように単価を抑えたくなりますが、低すぎると入札の土俵に乗れず、表示回数0のまま「配信中」と表示され続けます。予算消化率より先に表示回数(インプレッション)を見る。表示0が続くキーワードは、単価の問題か母数の問題かをまず切り分けます。
4. 撤退ラインを出稿前に書面で決める。 「なんとなく続ける」が一番高くつきます。決めるのは3点です。
- 期間と金額:例「3ヶ月・総額10万円まで」。計測が正しく動いている期間だけをカウントする
- 見る数字:コンバージョン数だけでなく、検索語句レポートの中身。実際に拾えている検索語が発注意図の語なら、コンバージョン0でもLP改善で続行の余地あり。無関係な語ばかりなら、LPを直しても意味がないので停止か再設計
- 続行の条件:「リッチメニュー 制作」型の勝ち筋キーワードが1つでも見つかったら、そこに予算を寄せて続行。期間内に1つも見つからなければ撤退し、その予算をSEOかMEOに回す
SEOから始める場合の最初の一手
SEO優先と判断した場合、最初にやるべきは記事の量産ではありません。お客様が実際に発している「困りごとの言葉」を集めることです。
店舗なら、予約時・来店時の質問、電話での問い合わせ、口コミに書かれた不満。そこに出てくる言葉は、ほぼそのまま検索されています。弊社の最大流入記事が「応答メッセージ 反応しない」という、サービス紹介とは何の関係もない困りごと語で獲れているのがその証拠です。表記ゆれ(「反応しない」「返信こない」「動かない」)を1本の記事でまとめて受けると、少ない本数でも表示は積み上がります。
そして記事の末尾には、必ず次の一歩(LINE登録・問い合わせ・予約)への導線を置いてください。困りごとで来た人は今日は発注しませんが、導線がなければ、検討段階に入ったときに戻る先がありません。
まとめ
- 広告かSEOかは予算で決めない。自社が検索される言葉の性質で決める
- 同じ28日間の実測では、広告291セッションで問い合わせ0件、検索経由(直接流入含む)で12件。訪問は買えるが、問い合わせは言葉の性質に従う
- 広告が機能するのは「〇〇制作」「〇〇代行」型の発注語に母数がある場合。抽象語・掛け合わせ語は表示0がありうる
- 広告をやるなら、計測の完成・フレーズ一致・表示回数の確認・書面の撤退ラインを予算より先に決める
- 困りごと語で検索される商材はSEOが先。記事は止めても残る資産になり、直接流入という形で後から問い合わせが返ってくる
弊社では、こうした実測データに基づく集客設計(広告・SEO・MEOの配分判断を含む)のご相談を受け付けています。自社がどの型に当たるか判断がつかない場合は、検索データの確認からお手伝いします。