LINE配信ツールの選び方|月額は「基本料金+オプション」で比べる。外部連携が必要になる境界線
LINE配信ツールの選び方|月額は「基本料金+オプション」で比べる。外部連携が必要になる境界線
先に結論を書きます。LINE配信ツール(Lステップ・エルメなど、LINE公式アカウントの拡張ツール)の選定で最初にやるべきことは、ツール同士の比較表を眺めることではありません。自分がやりたいことを機能の言葉に翻訳し、その機能が各ツールの「どのプランに」載っているかを確認することです。
理由は単純で、この種のツールは同じツール内でもプランによってできることがまったく違うからです。「Lステップでできる」という情報は、それだけでは月額5,000円でできるのか、32,780円必要なのか、さらにオプション11,000円が要るのかが分かりません。ツール名で選んで契約した後に「その機能は上位プラン限定だった」と判明すると、想定月額が2倍、3倍に膨らみます。
弊社(graciauto)は名古屋を拠点に、美容室・店舗ビジネスのホームページ制作とLINE公式アカウント構築をしています。この記事は、友だち数51万人規模の美容サロンのLINE公式アカウントで「デジタル回数券システム」を構築した際に、配信ツールのプラン仕様と外部連携オプションを実際に調べ、検証しながら構成を決めた記録がもとになっています。
ツール選定を最後まで確定させなくても、要件定義は進められる
まず選定の進め方の話です。弊社の回数券案件では、要件定義書をv1からv5まで5回改訂する間、ツールは「エルメ/Lステップ」の両にらみのまま進めました。最終的にLステップに確定したのは、要件が固まり、その要件を満たす機能とプランを突き合わせられる状態になってからです。
これは手戻りではなく、正しい順序だと考えています。先にツールを決めてしまうと、要件のほうをツールの制約に合わせて曲げることになりがちです。逆に要件が先にあれば、「この要件を満たすのはどちらのどのプランか」という事実の確認だけで選定が終わります。ツールの優劣を議論する必要がなくなるのです。
要件定義の段階で決めるべきことは、たとえばこういう粒度です。
- 顧客ごとに保持したいデータは何か(残回数・購入日・有効期限など)
- そのデータを更新するきっかけは何か(店頭QRの読み取り・ボタンのタップなど)
- 表示をどう出し分けたいか(残回数ごとにリッチメニューを切り替えるなど)
- そのデータを外部(スプレッドシートや基幹システム)に出す必要があるか
この4点目が、後述する「外部連携が必要になる境界線」に直結します。
機能とプランの対応を実際に調べた結果(Lステップの例)
Lステップを例に、弊社が2026年7月時点の公式情報で確認した対応関係を示します。プラン料金は、フリー0円(月200通)/スタート5,000円(5,000通)/スタンダード21,780円(30,000通)/プロ32,780円(50,000通)です(いずれも税込。最新の料金・仕様は必ず公式サイトで確認してください)。
| やりたいこと | 必要な機能 | 必要なプラン | 追加費用 |
|---|---|---|---|
| 属性・行動でリッチメニューを出し分ける | セグメントリッチメニュー | スタンダード以上 | なし |
| 店頭QRの読み取りをトリガーにアクションを実行する | 流入経路分析QR(実行=いつでも) | プロ限定 | なし |
| ツールから外部(GAS等)へデータを送る | Webhook転送 | 全プラン | +5,500円/月 |
| 外部からツールのデータを読み書きする | API連携 | プロ限定 | +11,000円/月(Webhook込) |
この表から分かることが2つあります。
1つ目は、トリガーになる機能ほど上位プランに寄っていることです。回数券の消化トリガーに使う「QRを読むたびにアクションを実行する」機能はプロ限定でした。つまり店頭QR起点の仕組みを作りたい時点で、月額32,780円が最低ラインとして確定します。スタンダード(21,780円)ではこの仕組み自体が組めません。
2つ目は、外部連携を全部盛りにすると43,780円/月になることです。プロ32,780円+API連携11,000円という構成です。ここを「本当に必要か」で削れるかどうかが、月額を決める分かれ目になります。
外部連携が必要になる境界線は3段階で考える
外部連携のオプションは「あったほうが安心」で契約すると、そのまま月額に固定費として乗り続けます。弊社は次の3段階で判断しています。
段階1: ツール内のアクションだけで完結しないか
まず疑うべきは「そもそも外部連携なしでできないか」です。
弊社の回数券案件では、当初「有効期限の自動計算(購入日から6ヶ月後)は外部のGAS連携でないと難しいだろう」と想定し、API連携込みの月43,780円を見込んでいました。ところが仕様を精査すると、Lステップの友だち情報欄(年月日型)には「+0年6ヶ月0日」というカレンダー通りの加算操作が用意されており(2025年9月のアップデートで追加)、月末の日付調整までツール側がやってくれることが分かりました。結果、残回数の減算・条件分岐・リッチメニュー切り替え・期限判定まで含めてすべてツール内アクションで完結し、月額はプロプランの32,780円のままで済みました。差額は月11,000円、年間13.2万円です。
ツールのアップデートで「以前はできなかったこと」ができるようになっているケースは珍しくありません。外部連携を前提に置く前に、現行仕様を一次情報(公式ドキュメントと実機)で確認する価値は十分あります。
段階2: 一方向の送信(Webhook)で足りないか
外部にデータを出したい場合でも、「記録できればよい」のか「外部から書き戻したい」のかで必要なものが変わります。記録だけならWebhook転送(+5,500円)で済み、書き戻しが必要ならAPI連携(+11,000円)になります。
ただしここに落とし穴があります。Webhook転送で送られてくるのはLINE公式アカウントの生データのみで、タグや友だち情報欄といったツール独自のデータは含まれません。「残回数をスプレッドシートに記録したい」という目的だと、残回数はツール独自データなのでWebhookでは取れない、という事態が起こりえます。オプション契約の前に、転送されるペイロードに目的のデータが含まれるかを必ず確認してください。
段階3: 月額オプションなしの代替手段はないか
外部の台帳が必要でも、リアルタイム性が要らないなら月額ゼロの構成があります。弊社の回数券案件で最終的に採用したのは、ツールの管理画面からCSVを手動出力し、Google Driveの取込フォルダに入れると、GAS(Google Apps Script)が5分以内に履歴スプレッドシートへ差分反映するという構成です。API連携もWebhookも契約せず、店舗別の購入・消化実績の台帳管理を実現しています。
この方式の制約も正直に書いておくと、CSVには「現在の値」しか入っていないため、イベントごとの正確な発生時刻や発生店舗までは復元できません。リアルタイムの書き戻しや厳密なイベントログが要件なら、素直にAPI連携を選ぶべきです。要は、要件の精度に応じて払うという判断です。
契約前に実機検証すべきこと
プランと機能の対応が取れても、公式サイトに書いていない挙動の仕様が実装の成否を分けることがあります。弊社が実機で確認して初めて分かったものを2つ挙げます。
- アクションの条件は「そのアクションが実行される瞬間の値」で評価される。減算アクションの後ろに置いた条件分岐は減算後の値を見ます。これを知らずに組むと、残回数0の顧客がQRを読んだときにさらに減算されてマイナスになる、といった不具合が起こりえます(弊社はタグを使ったガード処理を先に入れて防ぐ設計にしています)
- 日付型の比較は「残り期間」での絞り込みになる。数値のような不等号比較とはUIも挙動も別物で、範囲指定の解釈を誤ると期限切れ判定がずれます
多くのツールには無料期間やテスト用の運用ができる余地があります。本契約の前に、テスト用の友だち(自分のスマホ)で核心部分の挙動を通しで検証することを強く推奨します。特に本番の友だち数が大きいアカウントでは、検証なしの本番投入は事故につながります。
まとめ: 選定の手順
- やりたいことを要件として書き出す(ツールは決めない)
- 要件を機能の言葉に翻訳し、候補ツールの「プラン×機能」対応表を作る
- 外部連携は3段階(ツール内完結→Webhook→API)の順で必要性を判定する
- 月額は「基本料金+オプション」の合計で比較する
- 契約前に核心の挙動を実機検証する
配信ツールの月額は、設計しだいで要件を満たしたまま数万円単位で変わります。弊社の実例では、外部連携の要否を精査したことで想定43,780円が32,780円に収まりました。ツールの費用感を含むLINE構築全体のコスト構造はLINE構築の費用は初期費用だけ見ても意味がない|月額の実費内訳まで開示するで、今回題材にした回数券システムの実装の中身はLINEで回数券をデジタル化する方法|QRを読むだけで残回数が減る仕組みを本番構築した記録で詳しく書いています。
自社の要件がどのプラン・どの構成に収まるのか判断がつかない場合は、要件の書き出しからお手伝いできます。お気軽にご相談ください。