ホームページの初稿に違和感があるときの伝え方|「なんか違う」を直せる指摘に変える3つの分解
ホームページの初稿に違和感があるときの伝え方|「なんか違う」を直せる指摘に変える3つの分解
制作会社から初稿が上がってきた。悪くはない。でも、なんか違う。この「なんか違う」を、そのままの言葉で返すと、たいてい直りません。「もう少しおしゃれに」「もっとインパクトを」と伝えて、返ってきた第2稿がさらに遠ざかる――初稿レビューは、制作の全工程でいちばん揉めやすい局面です。
先に結論を書きます。初稿への違和感は、「色」「強さ」「情報量」の3つの軸に分解してから伝えると、制作側が一往復で直せる指摘に変わります。
- 色――「色が違う」と感じる違和感の大半は、色相ではなく、彩度と装飾の量
- 強さ――「弱い」「物足りない」の正体は、数字の大きさと区切りのはっきりさ
- 情報量――「ごちゃごちゃする」「薄い」は、1画面に入っているブロックの数と余白
この3軸で「どこの・何が・どちら方向に」を言えれば、感覚語は具体的な作業指示に変わります。順に説明します。
「なんか違う」がそのまま伝わらない理由
制作側は、もらった言葉を必ず何かの作業に翻訳します。「おしゃれに」なら余白を広げるのか、フォントを変えるのか、写真を差し替えるのか。感覚語のままだと、この翻訳を制作側が推測で行うことになり、推測が外れると逆方向の第2稿が返ってきます。
翻訳のズレがどれくらい起きるものか、実例を挙げます。名古屋のWEB制作会社graciautoが、関東の水回りメンテナンス事業者のホームページを制作したときのことです。クライアントから配色イメージが2案提示され、「1枚目の色合いが良い」という言葉をいただきました。ところが2案の色を実際に測ってみると、色相はほぼ同じでした。どちらも濃紺と金です。
本当に違っていたのは、色ではなく次の6点でした。
| 軸 | 「良い」と言われた案 | もう一方の案 |
|---|---|---|
| 彩度 | 高い。濃紺のベタ塗り面が広い | 低い。紺は文字と細い線だけ |
| 装飾の数 | 約8種類(グラデーション・縁取り文字・マーカー等) | 2種類 |
| 余白 | セクション間ほぼゼロ | セクション間60〜90px |
| 情報密度 | 1画面に7ブロック | 1画面に3ブロック |
| 写真の役割 | 背景として全面に敷く | 片側に配置した主役 |
| 文字の造形 | 縁取り・影付き | 装飾なし |
つまり「色合いが良い」という言葉を文字どおり受け取って色を直しても、何往復しても着地しなかったはずです。違和感や好みを言葉にするとき、人は手近な語彙――多くの場合「色」――に寄せてしまいます。だからこそ、伝える側が一段だけ分解しておく価値があります。
分解1「色」――色相・彩度・面積・装飾を分けて指す
「色が違う」と言いたくなったら、次の4つのどれなのかを確かめてください。
- 色相――赤か青か緑か。本当に色そのものが違うケースは実は少数です
- 彩度――鮮やかか、落ち着いているか
- 面積――同じ色でも、ベタ塗りの面が広いか、線や文字だけに使われているか
- 装飾――グラデーション、縁取り文字、マーカー、飾り罫の量
先ほどの実例では、鮮やかな配色と装飾の多さは「今すぐ修理します」と打ち出す緊急対応型の見せ方であり、定額の定期メンテナンスを売りにする事業の考え方と逆を向いていました。同じ見た目をしていると、同じ土俵で価格だけを比べられてしまいます。色の指摘は、事業をどう見せたいかに直結します。
伝え方の例です。「もっと明るく」ではなく、「色はこのままで、濃い色のベタ塗り面を減らしてほしい」「飾り(グラデーション・縁取り・マーカー)を減らしたい。色数は変えないでほしい」。何を維持して何を変えるかが分かれていれば、制作側は迷いません。
分解2「強さ」――装飾ではなく、数字の大きさと区切りで指す
初稿が「薄い」「弱い」「印象に残らない」という違和感も、よくあります。この感覚自体は正しいことが多く、遠慮せず伝えるべきです。ただし「もっと強く」とだけ伝えると、装飾が足される方向に転びがちです。
画面の強さは、装飾ではなく次の3つで作れます。
- 数字の大きさ――実績や料金の数字を、画面内でいちばん大きい要素にする
- 区切りのはっきりさ――画面の端から端まで断ち切った濃色の帯で、セクションの切れ目を明確にする
- 見出しの文字サイズ――大きさそのもので業種と主張を伝える
実績の数字が十分に揃っている事業なら、飾らずに大きく並べたほうが強くなります。装飾は材料が弱いときに足すものです。
文章の「強さ・らしさ」にも同じことが言えます。ある革製品ブランドのサイトを制作した際、「説明っぽい」「資料っぽい」という違和感の正体を突き詰めると、「AではなくB」という対比構文と、ブランドが自分の戦略を自分で解説する文に行き着きました。企画書の中の言葉がそのまま画面に出ると、サイトは資料に見えます。構文単位まで特定できれば、「対比構文を全体で2箇所までに減らす」という数えられる指示になります。
ここで注意したいリスクがあります。抽象的な感覚語だけで修正を重ねると、制作側が逆方向に振りすぎる揺り戻しが起こります。「説明っぽい」とだけ伝えると、今度は詩的すぎて意味の分からない文章が返ってくる、という往復です。これを防ぐには、上限と下限を両方伝えます。「意味が通ることは崩さないでほしい。そのうえで、理由を説明する文だけ削ってほしい」。正解はたいてい「意味が通る」と「説明しない」の間の帯にあり、帯の両端を示せば一往復で収まります。
分解3「情報量」――1画面のブロック数と余白を数える
「ごちゃごちゃする」「間延びしている」という違和感は、数えれば伝えられます。スクロールせずに見える範囲に、独立したかたまりがいくつあるか。先の実例では7ブロックと3ブロックの差でした。数字にした瞬間、「1画面3ブロックを目安に間引いてほしい」という指示になります。
もうひとつ、情報量の判断で持っておきたい視点が「この密度は全ページで維持できるか」です。チラシ1枚なら成立する密度は、複数ページのサイトでは成立しません。トップページだけ賑やかに作り込むと、料金表や会社概要のページが別サイトのように見えます。また、料金の分かりやすさを売りにする事業で装飾の多い画面に料金表を置くと、正直に書いた料金がかえって「盛っている」ように見えます。読みやすさが商品の一部なら、情報量を絞ること自体が営業上の判断です。
伝わる修正依頼の書き方――5つの型
分解した違和感を文章にするときの型です。
- 場所を特定する。「全体的に」ではなく、セクション名やスクリーンショットで「ここ」を指す。全体の印象の話でも、いちばん気になる1箇所を代表として挙げる
- 解釈ではなく現象を書く。「安っぽい」(解釈)ではなく「縁取り文字と金のグラデーションが使われている」(現象)。現象まで下ろせない場合は「この画面を見て◯◯な会社だと感じた。◯◯と感じられたい」と、受け取った印象と目指す印象を並べる
- 方向と量を数で書く。「減らして」ではなく「装飾は2種類まで」「対比構文は2箇所まで」。禁止形はとくに強力で、「縁取り文字は使わない」「この色は面に使わず線だけ」のような指定は解釈の余地がありません
- 良い部分を先に固定する。「ここは変えないでほしい」を修正点より先に書く。固定がないと、直してほしくなかった箇所まで作り直され、第2稿で新しい違和感が生まれます
- 参考は1つに絞る。参考サイトを3つ4つ並べると、制作側はどの要素を取るべきか分からなくなります。1つ挙げて「このサイトの余白の取り方だけ」と、参照してほしい軸を1語添えます
なお、初稿の方向性を変えてもらうときでも、最初の感覚を否定する必要はありません。実例で使った実際の伝え方は「1枚目を良いと感じたのは正しい。ただ、その強さの正体は色ではなく、数字の大きさと区切りのはっきりさで、それはもう一方の配色のままでも出せます」という組み立てでした。発注側から制作側に伝えるときも同じで、「初稿の◯◯は良い。この良さを保ったまま、△△だけ変えたい」という形にすると、方向転換が否定ではなく統合になります。
違和感の原因が「前提のズレ」のこともある
最後に、3軸のどれにも当てはまらない違和感があります。表現は整っているのに、書かれている内容がしっくりこないケースです。この場合、原因はデザインではなく、制作側に渡っている情報が実態とズレていることを疑ってください。
制作の現場では、ヒアリングを重ねても前提が覆ることがあります。実際にあったズレの例です。
- 拠点――登記上の住所と、実際に営業の起点になっている場所が違った。商圏の説明が全部ズレる
- 実績――Googleの口コミは数件でも、別の集客プラットフォームに800件以上の評価が眠っていた。「実績の見せ方が弱い」と感じた原因は、情報が制作側に渡っていなかったこと
- 体制――1名で運営しているのか複数名なのかが伝わっておらず、対象読者も写真も文章の一人称も実態と合っていなかった
前提がズレたまま表現の修正指示を重ねても、直りません。「デザインの問題ではなく、伝えていた情報が実態と違っていた」と気づいたら、その旨を率直に伝えて、構成から見直してもらうほうが結局早く着きます。初稿の後に前提を訂正するのは気が引けるかもしれませんが、制作側にとっても、ズレを抱えたまま完成に進むほうがはるかに損失が大きいのです。
まとめ
初稿への違和感は、放置しても、感覚語のまま投げても直りません。
- 「色が違う」は、色相・彩度・面積・装飾のどれかまで分解する。大半は色相ではない
- 「弱い」は装飾ではなく、数字の大きさ・区切りの帯・見出しのサイズで直してもらう
- 「ごちゃごちゃ・薄い」は1画面のブロック数を数えて、目安の数で伝える
- 指示は「場所・現象・数・固定する箇所・参考1つ」の型で書く。抽象語だけの往復は、逆方向への振りすぎを生む
- 3軸で説明のつかない違和感は、前提のズレを疑い、構成から見直してもらう
「なんか違う」は、直せる指摘の原石です。分解の手間を一度かけるだけで、修正の往復回数は目に見えて減ります。