ホームページ制作のヒアリングで確定させる項目|回答ひとつで構成が変わる6つの質問
ホームページ制作のヒアリングで確定させる項目|回答ひとつで構成が変わる6つの質問
ホームページ制作のヒアリングでまず確定させるべきなのは、デザインの好みではなく事業の実態に関する6項目です。実際の営業拠点、対応できる件数の上限、集客チャネルの内訳、既存プラットフォームの規約、料金の見せ方、実績と口コミの所在。この6つは、回答によってサイトの構成そのものが変わります。色やフォントの話は、この6項目が埋まってからで間に合います。
制作会社側から見ると、ヒアリング前に作った構成案は仮説です。graciautoでは、回答を受けて構成が変わることを前提に工程を組んでいます。逆に言えば、発注側がこの6項目を先に整理しておけば、仮説の修正が1往復で済み、制作は最短距離で進みます。この記事では、実際の制作案件で「回答ひとつで設計が変わった」項目を軸に、聞くべきこと・答えるべきことを整理します。
なぜデザインより先に事業の実態を聞くのか
ホームページの構成は、事業がどう回っているかの写し絵です。1日に何件さばけるのか、今どこから客が来ているのか、どこを増やしたいのか。ここが違えば、同じ業種でもページ構成は別物になります。
わかりやすいのが「問い合わせを増やす」がゴールにならないケースです。1名体制で稼働が既に埋まっている事業者の場合、問い合わせ総数を増やしても捌けません。むしろ取り逃しが増えて低評価につながります。この場合に設計すべきは、既存の受注を、手数料のかからない経路・自社で制御できる経路に移すことです。目標に置くべき数字は「問い合わせ総数」ではなく「自社サイト経由の受注比率」になります。
同じサイトでも、この一言が決まるかどうかでトップページの主役が変わります。前者なら新規向けの訴求を最上部に置きますし、後者なら既存客が戻ってくる導線とリピート周期の説明が主役になります。デザインの相談はその後です。
確定させるべき6項目
1. 実際の営業拠点はどこか(登記住所と一致しているか)
まず聞くべきは「登記上の住所」ではなく「実際にどこから出発して現場に向かうか」です。
登記住所が実家や自宅で、実際の営業拠点は別の市にある、というケースは実在します。この情報はサイトのほぼ全部に効きます。NAP(店名・住所・電話番号)の統一、構造化データの住所、対応エリアページの並び順、そして「どこを拠点に、どの範囲を回っているか」という商圏のストーリー。ここを登記住所のまま書き進めると、後から全ページの前提を差し替えることになります。
発注側の準備:登記住所と営業拠点が違う場合は、ヒアリングの最初に自分から伝えてください。制作会社は登記情報から推測して進めることがあり、聞かれないまま進むと気づかれません。なお、日本の企業ドメイン(co.jpなど)のWHOIS情報に住所は公開されず組織名のみが出るため、自宅を登記地にしていること自体がサイト上で露見するわけではありません。
2. 1日・1か月に対応できる上限は何件か
体制が1名なのか複数名なのかで、ページの対象読者が変わります。
たとえば集合住宅の清掃を扱う事業者の場合、1名体制なら「小規模なアパートを1日十数戸まで」が現実的なラインです。ここを聞かずに「主戦場は大規模マンション」という前提で書くと、問い合わせは来ても受けられない案件ばかりになります。
聞き方は「1日に何件までなら無理なく対応できますか」「それを超えたときはどうしますか(日程相談・断る・外注)」の2つで十分です。この回答は、そのままサイトに書く価値があります。「1日◯件まで対応、超える場合は日程をご相談」と明記してあるサイトは、発注側から見ると誠実に見えますし、無理な依頼が減ります。
3. 今の集客はどこから何割来ているか
これが目標設定を決める、最も重要な質問です。
ある事業者のヒアリングでは、受注の約7割がポータル・プラットフォーム経由、約2割が法人からの直接依頼、約1割が紹介という内訳でした。この数字が出た瞬間に、サイトの最重要課題が「新規の流入を増やす」から「プラットフォーム経由の客が次回は直接戻ってくる状態を作る」に変わりました。
割合が分からない場合でも、「先月の問い合わせを10件思い出して、それぞれどこ経由だったか」を数えるだけで傾向は出ます。ざっくりでいいので必ず出してください。ここが空欄のまま作られたサイトは、誰に向けたページなのかが決まらないまま完成します。
4. 既存プラットフォームの規約で何が禁止されているか
ポータルサイトや予約プラットフォームを使っている事業者では、ここを先に確認しないと公開後に修正が必要になるリスクがあります。
実際の確認結果として、あるプラットフォームでは次のような線引きでした。
| やりたいこと | 可否 |
|---|---|
| プラットフォームのURL・店舗ページへリンクを貼る | 可 |
| 「◯◯で累計◯件の実績」と文章で言及する | 可 |
| プラットフォームのロゴ・受賞バッジを掲載する | 事前申請と審査が必要 |
| 口コミ本文を転載する | 不可 |
| QRコードや名刺で自社サイトへ誘導する | 不可 |
重要なのは、禁止されているのは「事業者側が誘導する行為」であって、客が自分で店名を検索することは自由という点です。だからこの手の事業者では、店名の指名検索で自社サイトが確実に1位に出る状態を作ることが、規約に触れずに手数料を減らす経路になります。サイトの主要KPIがここで決まります。
もうひとつ実務的な解として、他社プラットフォームの評価はsameAsで伝える方法があります。構造化データのsameAsに、Googleビジネスプロフィール・プラットフォームの店舗ページ・SNSのURLを並べておくと、口コミ本文を1件も転載せずに「同じ事業者である」と検索エンジン側に伝えられます。件数や受賞歴は事実データなので言及できますが、口コミ本文の著作権は原則として投稿者にあるため、スクリーンショットを含めて転載は避ける設計にしておくのが安全です。
5. 料金はサイト上でどう見せるか(定額か、積み上げか)
プラットフォームでは「基本料金+オプション」で細かく分かれている事業者でも、自社サイトではすべて込みの定額にしたい、というケースがあります。この判断はヒアリングで必ず取ってください。プラットフォーム上の料金表をそのまま自社サイトに移植すると、事業者の本来の売り方と食い違います。
あわせて確認すべきなのが過去の料金と現在の料金の差です。施工事例や実績ページに載せる過去案件は、当時の価格で受けているため、現行料金と一致しないことがあります。これを何も考えずに並べると、サイト内に2つの価格が並び、読者にも検索エンジンにも「結局いくらなのか」が伝わりません。
対処は実装側で片付きます。
- 事例ページの構造化データには価格を入れない(価格を持つのは料金ページだけにする)。機械には現行料金だけが伝わる
- 事例のテンプレートに「※料金は施工当時のものです」と料金ページへのリンクを自動で表示する。記事ごとに手書きしない
また、旧チラシなどに残っている「通常◯万円→期間限定◯万円」といった二重価格の表現は、根拠がないまま転記すると景品表示法上のリスクになります。「明朗会計・追加料金なし」と書きたい場合も、実際に追加費用が発生する条件があるなら、「事前にお伝えした金額から当日変わりません」のように、事実に沿った言い方へ置き換えます。
6. 実績と口コミは、どこに何件あるか
Googleビジネスプロフィールの口コミが少ないからといって、実績が薄いとは限りません。あるヒアリングでは、Googleの口コミは数件でしたが、別のプラットフォームに800件以上の評価とアワード入賞歴がありました。薄かったのは窓口のひとつだけで、事業の実績は厚かったわけです。
聞くべきは「口コミは何件ありますか」ではなく、「口コミや評価が載っている場所を、全部挙げてください」です。Googleビジネスプロフィール、業種別ポータル、マッチングサイト、SNS、業界団体の掲載ページ。ここを網羅すると、前項のsameAsに並べる材料がそろいます。
素材と権利の確認は、同じタイミングで済ませる
ヒアリングの回答と一緒に写真素材を受け取ると、制作の途中で止まりません。ただし受け取った素材はそのまま使えるとは限らないので、次の観点でその場で確認します。
- 解像度:Excelやスライドに貼り付けられた画像は圧縮されており、横1000px前後まで落ちていることがあります。トップページで大きく使うなら元データが必要です
- 文字の焼き込み:SNS用に作られたビフォーアフター画像は、文字やロゴが画像に焼き込まれていることが多く、サイトのデザインに合いません
- ビフォーアフターの整合:撮影アングルや背景が前後で違うと、比較写真として成立しません。同一アングルのものだけを選びます
- 権利元が不明な図版:どこかで拾った説明イラストは、構図が良くても自前で作り直します
- AI生成画像の扱い:AIで作った人物写真を使う場合、実在する担当者の氏名キャプションを紐づけないでください。イメージ写真として扱わないと、虚偽の表示になります
写真については、素材選びの段階でひとつ判断基準があります。業種を象徴するテンプレ的な写真(作業機材のアップなど)は、業種は一目で伝わりますが、同業が全員使っているため差別化になりません。主役に据えるべきは、代表者本人が現場で作業している写真です。機材の写真は誰でも用意できますが、本人の現場写真はその事業者にしかありません。特に個人・少人数の事業者では「誰が来るのか」が分かること自体が、依頼側の最大の不安に直接効きます。
デザインのヒアリングは「回避したいもの」から聞く
好みの色を聞くだけでは、方向性は決まりません。実務で効くのは次の3つです。
1. 避けたい方向を必ず聞く
「安っぽい」「古い」「派手すぎる」「色が多い」「暗い基調は避けたい」――回避条件のほうが、好みの色より判断材料になります。特に「暗い基調は避けたい」が出た場合、ファーストビューを暗い写真にする案は最初から外れます。
2. 「この色がいい」と言われたとき、差は色ではないことを疑う
複数案を見せて「1枚目の色合いがいい」と言われたとき、案同士の色相がほぼ同じだったことがあります。実際の差は色ではなく、彩度の幅、装飾の量、セクション間の余白、1画面あたりの情報密度、写真が背景か主役か、文字の造形――このあたりでした。本質は「チラシの文法」か「サイトの文法」かであり、色はその結果です。
このとき相手を否定せずに方向を修正する言い方があります。「良いと感じたのは正しいです。ただしその強さの正体は色ではなく、数字の大きさと区切りの明確さで、それはもう一方の配色のままでも出せます」。そのうえで移植する要素を具体的に3〜4つ挙げると、否定ではなく統合になります。
3. 密度は全ページ分で考える
チラシ1枚なら成立する情報密度は、10ページのサイトでは維持できません。料金表・会社概要・エリア一覧を同じ密度では作れず、トップページだけ賑やかで下層が寂しいサイトになります。そして明朗会計を売りにする事業では、装飾が誠実さを打ち消します。飾りの多い画面に料金表を置くと、正直につけた価格が「盛っている」ように見えてしまう。実績の数字が十分そろっているなら、飾らずに並べたほうが強く出ます。
発注側が事前に用意しておくと早いもの
制作会社から届くヒアリングシートを待たずに、次を手元にまとめておくと着手が1週間は早まります。
- 登記上の住所と、実際の営業拠点(違う場合は両方)
- 対応可能な件数の上限と、超えたときの対応
- 直近の問い合わせ経路の内訳(ざっくりの割合で可)
- 利用中のプラットフォームと、その規約で禁止されている行為
- 現行の料金と、過去に受けた案件の料金(差があるなら明記)
- 口コミ・評価・受賞歴が載っているURLをすべて
- 実績・事例の一覧(日付・エリア・かかった時間・費用)
- 写真素材(圧縮前の元データ)と、権利関係が不明なものの区別
- インボイス登録番号、営業時間、定休日
- 避けたいデザインの方向
7番の事例一覧は、あればサイトの説得力が一段変わります。たとえば「作業時間1.5〜2.5時間」という実データがあれば、「半日仕事だと思っていた」という依頼の心理的ハードルを潰せます。所要時間が違う2件が同額であれば、それは定額制の証明として使えます。事例は数字が入っている状態で出せると、そのまま原稿になります。
ひとつ注意点として、事例が特定の種類に偏っていないかは確認しておいてください。戸建ての事例が8本あっても、集合住宅の事例が0本なら、集合住宅向けのページだけ実例のない構成になります。偏りが分かった時点で追加を依頼すれば、公開までに間に合います。
まとめ
ホームページ制作のヒアリングで確定させるべきなのは、次の6項目です。
- 実際の営業拠点(登記住所と一致しているか)
- 対応可能な件数の上限(体制が何名か)
- 現在の集客チャネルの内訳(どこから何割)
- 既存プラットフォームの規約(誘導・掲載の可否)
- 料金の見せ方(定額か積み上げか、過去料金との差)
- 実績と口コミの所在(Google以外も全部)
この6つが埋まると、サイトの目標そのものが決まります。「問い合わせを増やす」なのか「既存客を自社経路に移す」なのか。ここが決まらないまま作られたサイトは、見た目が整っていても数字が動きません。
制作側にとっても、ヒアリング前の構成案は仮説にすぎません。回答を受けて構成が変わるのは正常な工程であり、変わらないほうがむしろ「ちゃんと聞けていない」サインです。発注側は上記10項目を先にまとめておく。制作側は事業の実態を先に聞く。この順番を守るだけで、手戻りはほとんど消えます。
graciautoでは、ホームページ制作の初回ヒアリングでこの項目を確認したうえで構成をお出ししています。すでに他社に依頼中で「聞かれた内容が少なくて不安」という段階のご相談も承っています。