多店舗のGA4はプロパティを分けない|店舗名ディメンションで全店比較する設計と手順
多店舗のGA4はプロパティを分けない|店舗名ディメンションで全店比較する設計と手順
店舗を複数展開している事業者さんから、アクセス解析についてこういう相談を受けることがあります。
- 店舗ごとにホームページがあるが、どの店が伸びていてどの店が弱いのか比較できない
- GA4のプロパティが店の数だけあって、毎回1つずつ開いて見るのが現実的でない
- そもそも「GA4は入っているはず」だが、誰も数字を見たことがない
先に結論を書きます。
複数店舗のGA4は、プロパティを店舗ごとに分けず、1プロパティ・1測定IDに集約してください。 店舗の判別は、計測タグから「店舗名」をカスタムパラメータとして送り、GA4側でカスタムディメンションとして登録して行います。
この設計にすると、全店舗のセッション数を1つの画面で並べて比較でき、「先週比で落ちた店」「AI検索経由の流入が出始めた店」を横断で拾えるようになります。逆に店舗ごとにプロパティを分けると、店舗数ぶんの画面を行き来することになり、実務では誰も見なくなります。分析は「見るのが楽かどうか」でほぼ決まります。
この記事では、白髪染め専門サロンのFC全25店舗のサイトに同一測定IDを一斉導入した実例をもとに、この設計の理由と手順、導入時にハマりやすいポイントを書きます。
なぜ1プロパティに集約するのか
GA4のプロパティは「分析の単位」です。プロパティを分けると、その間のデータは原則として横断できません。
多店舗ビジネスで実際に知りたいことを挙げてみると、ほとんどが店舗をまたいだ比較です。
| 知りたいこと | 必要な見方 |
|---|---|
| どの店が伸びているか | 全店のセッション数を並べる |
| 施策の効果が出た店・出ない店 | 前週比を全店で比較する |
| ChatGPTなどAI検索経由の来店があるか | 参照元を全店横断で見る |
| どの店のどのページが読まれているか | 店舗×ページで集計する |
プロパティが25個に分かれていると、この表のどれも1画面では作れません。1プロパティに集約し、「店舗名」ディメンションで切り分ければ、標準の探索レポートでもAPI取得でも、店舗はただの絞り込み条件になります。
なお「店舗ごとに数字を混ぜたくない」という心配は不要です。ディメンションで絞れば店舗単体の数字は正確に出ます。集約で失うものは実務上ほぼありません。
店舗の判別をホスト名に頼ってはいけない場合がある
「1プロパティに集めるなら、ホスト名(サブドメイン)で店を見分ければいいのでは」と考えるのが自然です。実際、全店舗が storeA.example.jp のようにサブドメインで綺麗に分かれていれば、ホスト名だけでも判別できます。
ただし実サイトでは、この前提が崩れていることがあります。25店舗に導入した実例では、2店舗だけがサブドメインではなく example.jp/store-a/ のようなサブディレクトリでも配信されている構成でした。この場合ホスト名は本体ドメインと同じになり、ホスト名だけでは店を判別できません。
だから、店舗判別は配信URLの構造に依存させず、タグ側から店舗名を明示的に送るのが安全です。gtag.jsの設定にカスタムパラメータを1行足すだけです。
gtag('config', 'G-XXXXXXXXXX', { 'store_name': '〇〇店' });
各店舗のサイトをテンプレートから生成している場合は、店舗設定ファイルの店舗名をビルド時に埋め込めば、手作業なしで全店に展開できます。
GA4側では、管理画面からカスタムディメンション(範囲=イベント、パラメータ名=store_name)を登録します。ここで重要な注意点が1つあります。カスタムディメンションは登録した日以降のデータにしか紐づきません(遡及しません)。タグを入れても、この登録を忘れていた期間の店舗名は後から復元できないので、タグ設置とディメンション登録は同じ日にやってください。
導入前に確認する2つの落とし穴
「GA4はあるはず」が空箱のことがある
導入前の現状確認で意外に多いのが、プロパティだけ作られていてタグが1ページにも入っていない状態です。25店舗の実例でも、過去に作られたプロパティが2つ見つかりましたが、両方ともデータがゼロの「空箱」でした。管理画面にプロパティが存在することと、計測が動いていることは別です。
確認は、対象サイトを実際にブラウザで開き、開発者ツールのネットワークタブで google-analytics.com/g/collect への送信が出るかを見るのが確実です。ページのHTMLに測定IDが書かれているかのチェックだけだと、タグが書かれていても実行時にブロック・上書きされているケースを見落とします。送信リクエストの中身まで見れば、測定IDと店舗名パラメータが正しい値で飛んでいるかも同時に確認できます。
なお、こうした空箱プロパティを放置すると、後から見た人が「どれが本物か」で必ず迷います。使わないプロパティは削除するか「(未使用)」と名前を変えておくのが親切です。
タグの挿入位置は「更新しても消えない場所」を選ぶ
タグをどこに入れるかは、そのサイトの作りで決まります。判断基準はサイトを更新・再生成しても消えない場所かどうかです。
- WordPressが本体のサイトなら、テーマまたはプラグインで全ページの
<head>に入れる方法で問題ありません - 一方、本体がJavaScriptアプリ(SPA)や静的生成で、WordPressはブログ部分だけという構成では、WordPressのプラグイン方式だと本体側のページが全部計測から漏れます。この場合はテンプレートの
<head>に直接書き、ビルドのたびに引き継がれることを確認します - ページを自動生成する仕組み(プリレンダリング等)があるサイトでは、生成処理が自分でページを開いたときのアクセスが計測に混ざるリスクがあります。生成時だけ計測を無効化するフラグ(
window['ga-disable-測定ID'] = true)を仕込んでおくと、機械のアクセスで数字が汚れるのを防げます
25店舗の実例では、テンプレートの <head> 冒頭に挿入し、全店を再ビルドしても消えないことを確認したうえで展開しました。展開後は全25店で送信リクエストを実測し、測定ID・店舗名がすべて正しいことを1店ずつ検証しています。一斉導入は「入れて終わり」ではなく、全店の実測検証までがワンセットです。ここを省くと、数か月後に「あの店だけ計測されていなかった」が起こります。
集約した後の運用:見る仕組みまで作って完成
1プロパティに集約すると、運用側の仕組みも1本で済みます。これが集約の実務上いちばん大きい利点です。
実例では、導入後に次の2つを用意しました。
- 週次レポートの自動生成: GA4のData APIから店舗名ディメンション付きでデータを取得し、毎週月曜の朝に「店別セッション数と前週比」「AI検索経由(chatgpt.com などの参照元)の流入」「流入元の上位」を一覧にして自動生成する。プロパティが1つなので、APIの接続設定も1つで全店ぶん取れます
- 改善候補の自動抽出: サーチコンソールのデータと組み合わせ、「検索順位9〜20位で表示回数が多いのにクリックされていないキーワード」を店舗ごとに抽出する。実際に「地域名+髪質改善」で9.7位・表示116回・クリック0といった、あと一歩で流入になるキーワードが各店から見つかりました
もう1つ、導入直後の注意です。前週比が意味を持つのは、導入から2週間後です。導入初週は比較対象の「前週」が存在しないため、最初のレポートで数字が空でも異常ではありません。また、導入前の期間のデータは当然ながら存在しないので、「先月と比べてどうか」が言えるのは1か月後からです。効果測定をあてにしている施策があるなら、その分早くタグを入れておく必要があります。
ちなみにこの導入のきっかけは、店舗オーナーからの「ChatGPTで調べて来店したというお客様が2件あった。ホームページの効果なのか?」という質問でした。導入前はこれに答える手段がゼロでしたが(タグなし・サーバーログ保存なし)、導入後は参照元 chatgpt.com のセッションとして数字で追えるようになっています。過去分は永遠に取れないので、「効果を聞かれてから入れる」では遅い、というのが実感です。
まとめ:設計の手順
複数店舗のGA4導入・立て直しの手順を整理します。
- 現状確認: 各店サイトをブラウザで開き、
g/collectの送信有無を実測する。プロパティの存在は計測の証拠にならない - 1プロパティ・1測定IDに決める: 既存プロパティを流用するならデータが空であることを確認。空箱プロパティは削除かリネーム
- 店舗名をタグから送る:
store_nameのようなカスタムパラメータをconfigに追加。ホスト名判別はURL構成が崩れた時点で破綻するので使わない - カスタムディメンションを同日に登録: 遡及しないため、タグ設置と同じ日に必ず行う
- タグは更新で消えない場所に入れる: テンプレート焼き込みなら再ビルドで引き継がれることを確認。SPA+WordPress併用構成はWordPress側だけに入れない
- 全店で実測検証: 送信リクエストの測定ID・店舗名を1店ずつ確認する
- 見る仕組みを自動化: 週次レポートと改善候補抽出まで作って運用に乗せる。前週比は2週間後から
GA4のイベント計測自体がうまく動かない場合の切り分けは、GA4のイベントが1件も届かないときの調べ方にまとめています。また、店舗が増えてもサイト側の管理が崩れない構造については店舗が増えてもホームページが崩れない作り方で書いていますので、あわせてどうぞ。
graciautoでは、多店舗サイトの計測設計から週次レポートの自動化までを一括で構築しています。「店舗ごとの数字が比較できない」「GA4が入っているか分からない」という状態からの立て直しもご相談ください。