美容室の新規が予約サイトからしか来ないとき|年代で入口が変わる調査データと、店前・地図・紙の3経路を整える順番
美容室の新規が予約サイトからしか来ないとき|年代で入口が変わる調査データと、店前・地図・紙の3経路を整える順番
新規のお客様が月に数人しか来ない。予約サイトの掲載プランは上げているし、クーポンも出している。それでも増えない——という相談は、予約サイト以外の入口がゼロになっている店で起きます。
先に結論を書きます。予約サイト以外の入口は「店前」「地図」「紙」の3つで、整える順番が決まっています。 店前 → 地図 → 紙の順です。
| 経路 | 具体的に何か | 性質 | 費用の出方 |
|---|---|---|---|
| ①店前 | 店名・看板・窓・のぼり | 一度整えると効き続ける | 初期費用のみ |
| ②地図 | Googleビジネスプロフィール・口コミ | 積み上がると効き続ける | ほぼ手間だけ |
| ③紙 | 折込チラシ・ポスティング | 打った月だけ効く | 打つたびに発生 |
順番がこうなる理由は単純で、①と②は一度整えれば資産として残り、③は打った分だけ消えていくからです。さらに、③の紙を先に打っても、①が整っていない店は取りこぼします。チラシを見て店の前まで来た人が、そこに何の店か分かる表示が無ければ、そのまま通り過ぎるためです。
この記事では、同一ブランド・同一メニューで運営している15店舗の実測値と、公的な調査データをもとに、3経路をどの順で、何を基準に整えるかを書きます。
そもそも、予約サイト以外の入口は本当に必要なのか
必要かどうかは、店の客層の年代で変わります。ここは感覚ではなく調査データで判断できます。
リクルート ホットペッパービューティーアカデミーの「美容センサス2024年上期(美容室・理容室編)」では、現在利用しているサロンをどうやって知ったか(認知経路)が年代別に集計されています。女性・美容室利用者の数値を並べると、ある年代で構成比が逆転します。
| 年代(女性) | サロンを街で見かけて | 予約・口コミサイト | フリーペーパー、チラシ |
|---|---|---|---|
| 全体(15〜69歳・n=5,159) | 15.5% | 31.5% | 3.5% |
| 30代(n=872) | 10.1% | 43.1% | 1.9% |
| 40代(n=1,115) | 14.8% | 32.6% | 3.5% |
| 50代(n=1,137) | 19.3% | 25.5% | 4.9% |
| 60代(n=914) | 26.2% | 18.8% | 5.9% |
※リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2024年上期≪美容室・理容室編≫」(2024年2月調査/全国の人口20万人以上の都市に居住する15〜69歳/複数回答)より、女性・美容室利用者の数値を抜粋
全体で見れば予約・口コミサイトが31.5%で最多、街で見かけては15.5%にとどまります。ところが60代では26.2%対18.8%で順位が入れ替わります。 さらに60代は「友人・知人の口コミ・おススメを聞いて」が25.7%で、街で見かけてとほぼ並びます。
つまり、20〜40代が中心の店では予約サイトが主要な入口ですが、白髪染めのように50代・60代が主客層になる業態では、店前と紹介が予約サイトを上回る入口になります。
ここが噛み合っていないと、努力の方向がずれます。60代のお客様が中心の店が予約サイトの掲載順位だけを上げ続けても、その層の4人に1人は、そもそも予約サイトを見ずに「通りがかりに見た店」を選んでいるからです。
自店がどちらなのかは、予約管理システムの顧客データで年代構成を出せば分かります。判断材料はそこにあります。
実例:同一ブランド15店の実測で分かったこと
愛知県内で20店舗以上を展開する白髪染め専門サロンのフランチャイズを支援しています。全店が同じメニュー・同じ価格帯・同じ販促物を使っているため、「店舗ごとの条件差」を比較しやすいサンプルです。
新店を除いた既存15店の月次平均(売上日報の集計値)は次のとおりでした。
| 指標 | 既存15店の平均 |
|---|---|
| 新規客数 | 22人/月 |
| 総客数 | 270人/月 |
| 売上 | 106万円/月 |
| 客単価 | 3,942円 |
| 次回予約率 | 52% |
この中に、新規が月4.5人しか入っていない店が1店ありました。総客数は月45人、売上は月19万円台です。
ここで重要なのは、その店の客単価が4,378円と、15店平均より11%高かったことです。再来率も他店と同水準でした。つまり接客も技術も単価も問題がなく、足りないのは新規の数だけという切り分けができます。
売上が伸びない店で最初に起こりがちなのは、「単価を上げよう」「メニューを増やそう」と店内側の施策に手をつけてしまうことです。しかし数字を分解すると、原因が入口の数にしか無いケースは珍しくありません。客数・単価・再来のどこが落ちているかを先に切り分ける手順は、美容室の売上が横ばいのときに最初に見る4つのデータにまとめています。
そして、この店の客単価が高かった理由は「高いメニューが売れていた」からではなく、安く入れるメニューを置いていなかったためでした。他店にある一段安いカラーメニューが無く、入口が実質1つしかない状態です。単価の高さが、そのまま新規の入りにくさになっていたわけです。
通行量から新規客数を見積もってはいけない
看板を検討するとき、「前の道路の通行量 × 転換率」で新規客数を試算した資料をよく見かけます。この計算は使わないほうが安全です。
同一ブランド内で実数を突き合わせると、次のようになりました。
| 店舗 | 前面道路の交通量 | 新規客数 |
|---|---|---|
| A店 | 3,673台/日 | 32人/月 |
| B店 | 11,284台/日 | 13人/月 |
交通量が3倍の店のほうが、新規は4割以下です。同じブランド・同じ販促物を使っていてこの結果ですから、通行量は新規客数の説明変数になっていません。
これは看板が効かないという意味ではありません。見積もりの根拠に通行量を使うと、他店の実数と突き合わせた瞬間に崩れるという意味です。社内やオーナーへの提案資料でこの式を出すと、説得どころか信頼を落とします。
代わりに根拠として使えるのが、前述の年代別の認知経路データです。「うちの客層は60代が中心で、その層の26%は街で見かけて来店している。今その入口が無い」という説明のほうが、実態に沿っていて崩れません。
なお、車で通る道に面した店では、看板の効き方は台数よりも読む時間と停まる場所があるかで決まります。実勢速度が25〜28km/hで混雑度が高い道(つまり流れが遅い道)に面し、駐車場がすぐ入れる位置にあれば、台数が少なくても看板は読まれます。逆に流れの速い幹線道路では、台数があっても文字は読まれません。
順番①:店前は「看板」より先に「店名」を決める
店前の入口を整えるとき、多くの店がいきなり看板の見積もりを取ります。ですが、先に決めるべきは店名です。
店名に地名が入っていない、あるいはブランド名と屋号が二重になっている状態だと、次のことが同時に起こります。
- 「地域名+業種」の検索に乗らない
- お客様が人に紹介するとき、店名を正しく伝えられない
- 地図アプリで探しても、目的の店にたどり着きにくい
- チェーン・フランチャイズなら、他店が積み上げたブランドの認知を使えない
看板を作ってから店名を変えると、看板ごと作り直すことになります。店名の判断は、看板の発注より前に置くのが正しい順番です。 支援先でも、看板の見積もりが出そろった段階で「先に店名を地域名入りに変更する」判断を入れました。専門性を伝えたい言葉は、店名ではなく看板のコピーやサブタイトルで残せます。店名と検索の関係は店舗ビジネスの指名検索を増やす方法にまとめています。
店名が決まったら、店前は費用対効果の高い順に次のとおりです。
- 窓・ガラス面のシート(数万円)。通りがかりの人に「何の店か」を伝える最短手段
- のぼり・A型看板(数万円)。設置・撤去が自由で、メニューや価格を試せる
- 本設の看板(数十万円)。庇看板・袖看板など
3の本設看板は、自治体の屋外広告物条例で面積・高さの基準と許可申請が定められていることがあります(例:面積35m²以下・高さ10m以下など)。発注前に基準を確認し、申請期間を日程に織り込んでください。
順番②:地図は、新しく集めるより「置き場所」を直す
2つめの入口が地図(Googleビジネスプロフィール、いわゆるMEO)です。ここは費用がほぼかからないぶん、優先度が高くなります。
先に正直に書いておくと、前掲の調査で「キーワード検索・地図検索」を認知経路に挙げた女性は全体で2.1%、60代でも2.5%です。地図は「店を知るきっかけ」としては小さい。 それでも2番目に置く理由は、地図が知った後に必ず確認される場所だからです。街で看板を見た人も、友人から店名を聞いた人も、予約する前にほぼ地図アプリで店名を検索します。60代で上位を占める「街で見かけて」26.2%と「友人・知人の口コミ」25.7%は、合計で半分を超えますが、その人たちの来店が成立するかどうかは、地図で見た情報と口コミで決まります。
入口そのものというより、他の入口から来た人を取りこぼさないための受け皿です。だから費用対効果が高い。
同じフランチャイズ20店舗のGoogleビジネスプロフィールを1つの管理画面に集約したとき、口コミ総数は526件でした。一方、同じ店舗が自社サイトに設置している口コミ機能には、21店舗合計で1,511件が溜まっていました。
書いてくれる関係はすでにあるのに、その3分の2以上が検索結果に出ない場所に置かれていた、ということです。地図経路を強くするときに最初にやるべきは、新しく口コミを増やす努力ではなく、書いてもらう場所の設計を直すことになります。
このとき、返信率も同時に見てください。20店を集約した時点で全店平均の返信率は17%程度でしたが、通知の仕組みを入れた1店だけは79%でした。差が出た理由は担当者のやる気ではなく、「新しい口コミが付いたら手元に通知が届き、そのまま返信できる導線があるか」です。詳しい実数と、そこから予約数に換算する手順はMEO対策は美容室の何をどれだけ変えるのかに書いています。
順番③:紙は、店前と受け皿が立ってから打つ
最後が紙(折込チラシ・ポスティング)です。
前掲の調査で「フリーペーパー、チラシ」を認知経路に挙げた女性は、全体で3.5%、60代では5.9%でした。上の年代ほど比率が高く、60代では予約サイト経由の3分の1近い規模があります。紙は「もう効かない」媒体ではありません。ただし、それでも順番は最後です。理由は2つあります。
1つは、打った月しか効かないためです。店前と地図は一度整えれば翌月以降も効き続けますが、紙は毎回費用が発生します。先に固定の入口を作ってから、上乗せとして打つほうが総額は安くなります。
もう1つは、受け皿が無い状態で打つと、費用のほとんどが1回きりの来店で終わるためです。紙は1人の新規を呼ぶためのコストが3経路の中で最も高くなります。そのコストは初回の売上だけでは回収できないことが多く、2回目・3回目の来店まで含めて初めて見合う計算になります。
したがって、紙を打つ前に次の3つを先に立てておきます。
- 店名と店前の表示が確定している(チラシを見て店の前まで来た人が、店を認識できる)
- 来店後に連絡できる手段がある(LINE公式アカウント等での前日リマインドと来店後のお礼)
- 次回予約を取る運用が回っている
2と3は「新規を定着させる仕組み」です。ここが無い状態で入口だけ増やすと、毎月チラシを打ち続けないと客数が維持できない構造になります。
数字で見ると、この差ははっきりします。支援先の既存店の次回予約率は平均52%で、上位店は70%を超えていました。同じ新規1人でも、次回予約が取れる店と取れない店では、その1人が1年間にもたらす売上が数倍変わります。新規獲得の費用対効果は、初回の客単価ではなく「その1人の年間売上」で判断してください。
前日リマインドや来店後のお礼は、予約システムを乗り換えなくても、予約データを書き出して通知だけ自動化する構成で足せます。具体的な組み方は予約リマインドのLINE通知を、予約システムを乗り換えずに足す方法にまとめました。
自店の順番を決める4つの問い
3経路のどこから手をつけるかは、次の問いで決まります。
1. 自店の客層は何歳が中心か
50代以下が中心なら、予約サイトと地図の比重が大きくなります。60代以上が中心なら、店前の優先度が上がります。予約管理システムの顧客データから年代構成を出してください。
2. 店名に地域名が入っているか
入っていなければ、看板もチラシも作る前に店名の判断を先に済ませます。ここを飛ばすと、作り直しの費用が発生します。
3. 来店後に連絡できる手段があるか
無ければ、入口を増やす前にここを作ります。入口を増やす施策より先に受け皿を作るほうが、同じ費用で残る客数が多くなります。
4. 時間帯別の来店数が、同業・他店とずれていないか
支援先では全店を通して午前の来店が多いのですが、1店だけ夕方に偏っていました。同じブランド・同じメニューでこの差が出るのは、その店だけ想定と違う客層が来ているサインです。営業時間を延ばせば解決するのか、来ている客層自体がずれているのかで打ち手が変わるため、時間を延ばす前に構成比を比べてください。
まとめ
- 予約サイト以外の入口は店前・地図・紙の3つ。店前 → 地図 → 紙の順で整える
- 年代によって来店きっかけの構成比は変わる。女性60代では「街で見かけて」26.2%が予約・口コミサイト18.8%を上回る(美容センサス2024年上期)。自店の年代構成を先に出す
- 通行量×転換率で新規客数を見積もらない。 同一ブランド内で、交通量が3倍の店のほうが新規が4割以下という実測がある
- 店前は看板より先に店名を決める。窓シート・のぼり → 本設看板の順。屋外広告物条例の申請期間を日程に入れる
- 地図は、新しく集める前に口コミの置き場所を直す。書いてくれる関係はすでにある場合が多い
- 紙は最後。店名・来店後の連絡手段・次回予約の3つが立ってから打つ
- 新規獲得の費用対効果は初回の客単価ではなく、その1人の年間売上で判断する
新規が予約サイトからしか来ていない状態は、裏返せば入口が1つしか無いということです。手数料も掲載順位も他社の都合で動きますが、店前と地図は自店の資産として積み上がります。まずは自店の年代構成と店名から確認してみてください。